
家庭やオフィスによく使用される室内照明が蛍光灯です。蛍光灯の寿命は、種類や使い方によって差がありますが、約6,000〜12,000時間といわれています。1日8時間点灯させたとすると、約2〜4年くらいが寿命です。
寿命が近づき「ちらつきが出る」「点灯までに時間がかかる」「光が暗くなる」などの不具合が出るようになったら、交換しなければなりません。では取り換えて不要になった蛍光灯はどのように処分すればよいのでしょうか。
本記事では蛍光灯の処分方法と産業廃棄物として処分が求められるケース、産廃として処分する際の処理業者選びのポイントを紹介します。蛍光灯を処分したいと考えている方は参考にしてみてください。
蛍光灯の廃棄には注意が必要
日常的に使う室内ランプは大きく蛍光灯と白熱灯、LEDランプの3種類に分けられます。
どれも似たものに思えますが、蛍光灯には微量の有害物質が含まれており、処分の際には注意が必要です。適切な処分を行わなかった場合、環境汚染やそれに伴う健康被害を招く恐れがあります。
蛍光灯には有害物質が含まれる
蛍光灯に含まれる有害物質の正体は、水銀です。蛍光灯が発光するのは、蛍光管内に注入した水銀ガスに電流を通し、発生した紫外線が蛍光塗料に当たるためです。
また蛍光灯に使用される安定器には、有害物質のPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれている場合もあります。安定器とは蛍光灯が安定して光源として利用できるよう、電流・電圧を制御するものです。
一般家庭用の蛍光灯器具にPCBは使用されていませんが、オフィスや教室で使用されている古いタイプの蛍光器具の中には、PCBが含まれているものもあります。
そのため照明器具のラベルや安定器の銘板などでPCBの有無を確認してから、処分する必要があります。使っている蛍光灯器具にPCBが使用されているかどうかの判別方法は、経済産業省のガイドラインを参考にしてください。
産業廃棄物として処理しなければならないケース
家庭で不要になった蛍光灯は一般廃棄物に分類されるため、自治体が処分を行います。個人での処分は、基本的に各自治体の処分ルールに従って回収などに出せばよく、特別な手続きは必要ありません。
しかし、オフィスや店舗などの事業所で排出された蛍光灯は、一般廃棄物ではなく産業廃棄物に分類され、排出者が責任を持って処分をする必要が生じます。同じ蛍光灯でも排出者が個人か法人かによって区別される点に注意しましょう。
産業廃棄物の回収は自治体では原則として行っていません。排出事業者が蛍光灯を処分する際は、産業廃棄物の処理業許可を得ている専門業者に依頼する必要があります。
また、蛍光灯の処分に関しては、2017年に行われた廃棄物処理法の改正によって、通常の産業廃棄物よりも厳しい規定が定められています。
具体的にどのような点に注意するとよいのか、以下で紹介します。
「水俣条約」発効に伴う新たな処分ルール
先の章でも触れたとおり、蛍光灯には水銀が含まれています。水銀は、有名な公害病である水俣病で知られるように、生物に深刻な健康被害をもたらす有害物質です。
水銀による健康被害および環境汚染は地球規模で問題視されており、2013年には水銀の人為的な排出を止めるための「水銀に関する水俣条約(Minamata Convention on Mercury)」が採択、2017年8月16日に発効されました。2024年時点の締約国数は、日本も含め148か国となっています。
この水俣条約の発効に伴い、日本では2017年10月1日に廃棄物処理法の改正が行われ、水銀廃棄物に関する規制が強化されました。
蛍光灯は新たに「水銀使用製品(産業廃棄物)」という分類に追加され、以下の通り、処理を委託できる事業者や廃棄方法などが変更されています。
これまでのルール |
---|
・蛍光灯の処理を委託する場合は、該当品目の処分業許可を持った事業者に委託をすること |
2017年より追加されたルール |
・蛍光灯は他の廃棄物と分けて適正に保管すること ・保管時や運搬時において、蛍光灯が破砕しないよう措置を講ずること ・蛍光灯の処分は「水銀使用製品産業廃棄物」を取り扱い範囲に含む処理業者に委託すること ・「委託契約書」「廃棄物保管場所の掲示板」の廃棄物の種類に「水銀使用製品産業廃棄物」が含まれることを明記すること ・「マニフェスト」の廃棄物の種類に「水銀使用製品産業廃棄物」が含まれること、またその数量を記載すること ・帳簿には「水銀使用製品産業廃棄物」に関わるものであることを明記すること ・安定型最終処分場への埋立てを行わないこと |
参考:
一般社団法人 日本照明工業会「事業者向け水銀使用ランプの分別・回収及び排出について」
環境省 「廃棄物処理法施行令等の改正について」
Minamata Convention on Mercury
処分方法を誤ると罰せられる可能性もある
水銀使用製品産業廃棄物に該当する蛍光灯は、正しく処分しないと処理業者だけでなく、処分を依頼した排出事業者に以下の罰則が科せられる恐れもあるため注意しましょう。
● 無許可の事業者に依頼した
⇒5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金または両方
● 委託基準を満たしていない事業者に依頼した
⇒3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金または両方
● マニフェストを交付せずに事業者に引き渡した
⇒1年以下の懲役または100万円以下の罰金
参考:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理および清掃に関する法律(第二十五条の一・第二十六条・第二十七条の二)」

蛍光灯を処分するときの注意点
蛍光灯を処分するときに注意したいポイントは、以下のとおりです。
ルールに沿って正しく処分する
家庭から排出された蛍光灯を自治体で処分する際は、指定の収集所に出せば不燃ごみとして処分してもらえる場合が多いです。
ただし、「専用の袋に入れること」「割れないよう箱に入れること」など、自治体ごとにルールは異なります。処分する前にお住まいの自治体のホームページなどでルールを確認しておきましょう。
事業所で不要になった蛍光灯は、「水銀使用製品産業廃棄物」として処分しなければなりません。その場合は、都道府県または政令市から水銀使用製品産業廃棄物の処理許可を得ている事業者に委託します。
廃棄する際に割れないようにする
蛍光灯には水銀が含まれています。割ってしまうと水銀が空気中に放出されてしまうため、注意してください。
蛍光灯内の水銀量は微量なため、すぐに健康や環境に悪影響が出るわけではありません。しかし、吸い込んでしまった水銀が体内に蓄積されると、健康被害が出る恐れもあります。また割れた破片で怪我をする恐れもあるので割らずに捨てましょう。
蛍光灯を処分する流れ
蛍光灯を産業廃棄物として処分する際の流れは、以下のとおりです。
不要な蛍光灯を分別する
使い終わった蛍光灯は、他の産業廃棄物と混ざらないよう分別して保管しておきましょう。
蛍光灯のような水銀使用製品廃棄物は「他のものと混合するおそれのないように仕切りを設けるなどの措置」を取る必要があると法令で定められているためです。
保管の際には割れないように緩衝材を使用したり、段ボールに保管したりするのがおすすめです。また、保管場所には蛍光灯を保管していると明示しておくとよいでしょう。
参考:環境省. 「廃棄物処理法施行令等の改正について」(入手日付2024-01-12)
処理業者に委託する
蛍光灯を自ら処分できない場合は、処理業者に回収を委託することができます。その際には各都道府県知事から許可を得た事業者に依頼しなければなりません。
また産業廃棄物処理の許可を得ていても、許可証に「水銀使用製品産業廃棄物を含む」と記載されていない場合、委託できません。必ず水銀使用製品産業廃棄物の処理許可を持つ事業者に委託してください。
参考:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理および清掃に関する法律(第十二条の五)」(入手日付2024-01-12)
契約書を作成する
委託先の事業者を選定したら、次に廃棄物処理法に基づき処理業者と契約を締結します。
産業廃棄物の委託契約では書面による契約を交わすことが必要です。口頭での契約は法令違反となるため書面で契約を取り交わしてください。
また、契約書には廃棄物の種類として「水銀使用製品産業廃棄物」が含まれることを明記しなくてはなりません。
参考:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第六条の二・第八条の四の二)」(入手日付2024-01-12)
引き渡しをする
契約を締結したら、収集運搬業者に蛍光灯を引き渡します。引き渡しの前には収集日時や受け渡し場所、搬出経路などを確認しておきましょう。収集日当日は排出事業者も立ち合い、引き渡しが確実に行われているか確認してください。
マニフェストの交付をする
蛍光灯の引き渡しと同時に、収集運搬業者にマニフェストを交付します。マニフェストには、廃棄物に「水銀使用製品産業廃棄物」が含まれること、またその数量を記載することを忘れないようにしましょう。
なお、排出事業者には、委託をした蛍光灯が最後まで適正に処理されたかをマニフェストの回収によって確認する義務があります。
参考:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理および清掃に関する法律(第十二条の三)」(入手日付2024-01-12)
処理業者選びの際に確認しておく4つのポイント
蛍光灯のような水銀使用製品廃棄物の処理は専門の事業者に委託できます。ここでは処理を委託する事業者を選ぶ際に確認しておきたい4つのポイントを紹介します。
見積もりを取る
委託する事業者によって処理費用は異なります。また排出場所や数量、形状によっても料金が変わってきます。そのため委託前に見積もりを取って費用を確認しておくとよいでしょう。
見積もりを出してもらう際には、以下のことを把握しておくとスムーズです。
● 廃棄する蛍光灯の本数
● 蛍光灯の形状(直管型、丸型など)
● ワット数(型番)
● 割れてしまった蛍光灯の有無
可能であれば、複数の事業者から相見積もりを取って、相場を把握した上で選ぶとよいでしょう。
自治体の許可基準を満たしているかを確認する
蛍光灯を処理できるのは、都道府県や政令市から水銀使用製品産業廃棄物の処理許可を受けた事業者だけです。依頼する際は、許可証に「水銀使用製品産業廃棄物を含む」と記載されていることを必ず確認してください。
契約書とマニフェストの作成に対応しているかを確認する
蛍光灯に限らず、産業廃棄物の処理を委託する際は、排出事業者と処理業者で契約書を取り交わす必要があります。
また産業廃棄物の委託には、マニフェストの運用が不可欠です。
蛍光灯の処分を依頼する事業者を選ぶ際は、廃棄物処理法の規定に従って契約を締結できるか、またマニフェストの運用に対応できる事業者かどうかを確認しておきましょう。
契約書とマニフェストの両方に対応できるかどうかは、処理業者の公式サイトなどで確かめられます。
実績を確認する
蛍光灯などの水銀使用製品産業廃棄物を処理するには、厳しい基準をクリアした事業者に委託することが大切です。特に実績が多い事業者を選ぶことをおすすめします。実績が多い事業者は、問題なく多くの排出事業者と継続的な契約を交わしていると推測できるためです。
また、優良産廃処理業者認定を受けている事業者を選ぶのもよいでしょう。優良産廃処理業社認定制度は通常の許可基準に比べて、厳しい基準に適合した優良な処理業者を都道府県・政令市が審査して認定するものです。
不適切な方法で処分されると、処理業者だけでなく依頼した排出事業者の責任も問われてしまいます。そのため、実績が多い事業者や優良産廃処理業者認定を受けている事業者を選ぶと安心事です。
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