サーマルリサイクルとは?メリット・デメリットを紹介

サーマルリサイクルとは?メリット・デメリットを紹介

プラスチックごみによる海洋汚染や、マイクロプラスチックによる生態系の破壊などから、近年プラスチックごみへの関心は高まりつつあります。
個人レベルはもちろん、企業レベルで削減対策やリサイクルを推進していくことが、こうした問題を解決する糸口となるでしょう。
リサイクル方法にはいくつかありますが、今回のテーマである「サーマルリサイクル」は、熱エネルギーを回収するリサイクル方法です。

本記事では、サーマルリサイクルの定義や日本でサーマルリサイクルが行われている理由、活用例などをご紹介します。
サーマルリサイクルに取り組んでみようと考えている方や、興味のある方はぜひ参考にしてください。

サーマルリサイクルとは?

サーマルリサイクル(Thermal Recycle:熱回収)とは、廃棄物を焼却させる際のエネルギーを回収して利用するリサイクル手法です。

サーマルリサイクルは、廃プラスチック類をリサイクルする際によく用いられています。2021年は、廃プラスチック類の総量の62%にあたる511万トンがこの方法で処理されました。

サーマルリサイクルでは、ごみ焼却熱利用、セメント原・燃料化、固形燃料化(RPF、RDF)などの手法を用いて、エネルギーを取り出します。

参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-14)

日本でサーマルリサイクルが行われている理由

日本では、サーマルリサイクルが積極的に採用されていますが、その主な理由には、廃プラスチック類の輸出制限が挙げられます。

元々は中国や東南アジアに廃プラスチック類を資源として輸出していましたが、汚染されたプラスチックごみの輸出がバーゼル条約の対象となったことを受け、輸出量が半減しました。これを受け、廃プラスチック類を国内で処理する必要性が出てきたのです。

またそもそも日本は、他の国と比較してプラスチックごみをエネルギーに変換する技術が優れている点も、理由の一つだと考えられるでしょう。


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サーマルリサイクルの活用例

サーマルリサイクルの活用例には、以下が挙げられます。

● 温水プール・浴場
● 工場の暖房・給油
● ビニールハウスでの栽培

それぞれの活用例の概要や効用を見ていきましょう。

温水プール

サーマルリサイクルを温水プールに活用した事例として、宮城県仙台市にある「葛岡工場余熱利用施設(葛岡温水プール)」や、長崎県諫早市にある「のんのこ温水センター」などが挙げられます。

いずれの施設でも、ごみ処理の過程で発生する熱エネルギーを利用して、プールの水を温めています。

※参考:仙台市:「葛岡工場余熱利用施設(葛岡温水プール)」 (入手日付2024-02-14).
※参考:のんのこ温水センター「サーマルリサイクルとは」(入手日付2024-02-14).

工場の暖房・給湯

工場の暖房・給湯にサーマルリサイクルを活用している事例に、大阪広域環境施設組合の取り組みがあります。
同組合では、ごみ焼却により発生した熱エネルギーを、ボイラー利用して得た蒸気を用いて工場内の暖房や給湯に使用しています。
加えて、近隣施設に蒸気を提供したり、電気事業者へ売却したりと熱エネルギーを有効活用している点が特徴です。

令和3年度には、標準的な家庭の約15万1千軒が、1年間で使用する約4億7,000万kWhの電気量を発電するという結果を残しました。

参考:大阪広域環境施設組合「サーマル・リサイクルとは」(入手日付2024-02-14).

ビニールハウスでの栽培

産業廃棄物処理場の熱を活用して、ビニールハウスでフルーツを栽培している企業もあります。
ビニールハウスで作られたフルーツは、特産物として地元の人に愛されるなど、サーマルリサイクルを有効活用した良い例といえます。

サーマルリサイクルのメリット

サーマルリサイクルには、以下に挙げるメリットがあります。

● 処理が難しい廃棄物を有効に活用できる
● 石炭・石油の節約になる
● 埋立地不足の問題に貢献する
● メタンガスの削減になる

それぞれのメリットを詳しくご紹介します。

処理が難しい廃棄物を有効に活用できる

ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルを行う場合、廃棄物の中に混じった異物を除去したり洗浄したりする必要があります。

その点サーマルリサイクルなら、処理が難しい廃棄物であっても容易にリサイクルが可能で、かつ熱エネルギーを回収し効率的に利用できます。

石炭・石油の節約になる

サーマルリサイクルから得られる熱エネルギーは、廃プラスチック類だと特に大きく、石炭や石油などの天然資源と匹敵するほどです。

そのためサーマルリサイクルを推進すると、石炭や石油などの資源の消費を節約できます。

埋立地不足の問題に貢献する

再利用やリサイクルできない廃棄物は、最終的に埋立処理されます。しかし埋立処分場の数は無限ではなく、残余年数(処分場が搬入量や処理能力を維持した場合、今後何年使用できるかを示す指標)には限りがあります。埋立地を設置するには多額のコストと広大な土地が必要となるため、容易に増設することはできません。

サーマルリサイクルでは、焼却プロセスで廃棄物が灰になり体積が小さくなります。そのため、埋立地不足の問題に貢献するとされています。

メタンガスの削減になる

メタンガスは劣化した廃プラスチック類から発生する、温室効果ガスの一種です。温室効果ガスの代表的なものに二酸化炭素が挙げられますが、メタンガスはその25倍以上もの温室効果があり、地球温暖化への影響度が非常に高いとされています。

サーマルリサイクルにより廃プラスチック類を適切に処理できれば、メタンガスの排出量を削減できます。

サーマルリサイクルのデメリット

サーマルリサイクルのメリットは先述したとおりですが、万能なリサイクル方法というわけではありません。サーマルリサイクルへの理解を深めるためにも、以下のデメリットを把握しておきましょう。

● 有害物質が発生してしまう
● 環境に良いとは言い切れない
● マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルが進まない

それぞれのデメリットをご紹介します。

有害物質が発生してしまう

サーマルリサイクルはエネルギー回収の点では有効です。しかし、プラスチックを燃焼させると二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスに加えて、ダイオキシンなどの有害物質が発生してしまう点がデメリットです。
ダイオキシンは化学的に安定した物質で、環境や土壌に蓄積されやすく、発がん性もあるため人体への悪影響が懸念視されています。

また燃焼後の灰には、鉛や水銀などの毒性の物質が含まれる可能性もあります。

環境に良いとは言い切れない

サーマルリサイクルはただ単に廃棄するよりは環境に優しいとされるリサイクル方法ですが、環境に良いとは言い切れない点もデメリットです。
先述したように、二酸化炭素やダイオキシンが発生すると、地球温暖化や水質汚染、土壌汚染、健康被害の原因となり得ます。

加えて、元来サーマルリサイクルは、大量のエネルギーを必要とする手法です。この点を考慮すると、環境へのプラスの影響とマイナスの影響を正確に評価しづらく、その効果に疑問を呈する意見も存在します。

マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルが進まない

サーマルリサイクルを進めると、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルが進まないという問題も生じます。

マテリアルリサイクル(Material Recycle:材料再生)とは、廃棄物を新しい製品の原料として再利用するリサイクル手法です。廃プラスチックを溶かしてプラスチック原料とした後は、ペットボトルや文房具など、さまざまな場面で用いられます。

ケミカルリサイクル(Chemical Recycle:化学再生)とは、化学処理を施し、使用済みの資源を原料に戻すリサイクル手法です。

2021年に国内で排出された824万トンの廃プラスチックのうち、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルで処理された量は、それぞれ全体の21.4%にあたる177万トン、3.5%にあたる29万トンです。

いずれもサーマルリサイクルの水準と比較して、低いことが分かるでしょう。

参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-14)

海外でのサーマルリサイクルの考え方

日本のみならず、海外でもサーマルリサイクルは進んでいます。しかし、日本と異なる考え方がある点が特徴です。

具体的には、「サーマルリサイクルはリサイクルのうちに入らない」「リサイクルといえばリユース・リデュース」などの考え方が挙げられます。日本との違いを把握するために、そしてリサイクルへの理解を深めるためにもそれぞれの考え方を詳しく見ていきましょう。

海外ではリサイクルのうちに入らない

海外ではサーマルリサイクルは、リサイクルの一部として認識されないことがあります。この背景には、リサイクルの定義や環境保護に対する考え方やアプローチが異なる点が考えられるでしょう。

海外では一般的に、リサイクルは廃棄物を再利用可能な状態に再加工したり変換したりするプロセスを指します。
この観点から見ると、サーマルリサイクルでは燃焼により灰となり、原料として再利用できないためリサイクルの定義には合致しません。
また、主原料が化石燃料である廃プラスチック類を燃焼させると、二酸化炭素が発生する点も、サーマルリサイクルがリサイクルのうちに入らないとされる理由として挙げられます。

廃プラスチック類に焦点を当てると、総排出量の約62%がサーマルリサイクルで処理されています。
数字だけ見ると高い割合でリサイクルされていますが、サーマルリサイクルに頼らない持続可能なリサイクル手法へと転換しないと、日本の取り組みが国際的な評価を得るのは難しいでしょう。

参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-14).

リサイクルよりもリユース・リデュース

リユース(Reuse:繰り返し使う)とリデュース(Reduce:減らす)は、リサイクル(Recycle:再資源化する)とともに、ごみの排出量削減や再資源化において重要な取り組みである3Rです。

リユースとは、一度使用した製品や資材をそのまま、または簡単な修理や改修を施して再度使用することを指します。ごみの排出量を削減できる、環境負荷を低減できる、過剰な生産や消費を抑えられるなどがメリットです。

リデュースは、そもそもごみの排出量を減らす取り組みを指します。例えば、レジ袋を貰わない、マイボトルを持参する、過剰包装を控えるなどが挙げられます。
リデュースを推進することで、温室効果ガスの排出量を削減できる効果に期待できます。

リサイクルとの違いは、いずれも「再利用に伴いエネルギー消費が少ない、もしくは必要としない」点です。こうした特徴があるため、海外では特に推進されています。

企業が検討できるサーマルリサイクル

ここからは、企業が検討できるサーマルリサイクルをご紹介します。

● プラスチックを焼却した熱を利用する
● バイオマス発電を行う
● 産業廃棄物を共同処理する

産業廃棄物の排出量を減らす取り組みの一環として、参考にしてください。

プラスチックを焼却した熱を利用する

企業がサーマルリサイクルを行う一例に、プラスチックを焼却した熱や蒸気をエネルギーとして回収し、再利用する方法が挙げられます。
実際、廃プラスチック類の主要なリサイクル手法でもあり、重要なエネルギー源になり得るため国内でも推進されています。主な手法は、以下のとおりです。

● ごみ焼却熱利用・ごみ焼却発電
● セメント原・燃料化
● 固形燃料化

ごみ焼却熱利用・ごみ焼却発電は、プラスチックを焼却する際の熱で蒸気を製造し、蒸気力を用いてタービンを回し発電して回収する手法です。

セメント原・燃料化では、FRP樹脂を細かく砕き、セメント製造の燃料・原料にします。

固形燃料化は、廃プラスチックを固形燃料に加工し、エネルギーとするプロセスです。

バイオマス発電を行う

バイオマス発電とは、植物や動物など生物由来の資源(バイオマス)を燃料として発電する手法です。バイオマスエネルギーは再生可能エネルギーの一種であり、環境負荷の小さいエネルギーとして注目を集めています。

バイオマス発電の手法は、主に以下の3つです。

● 直接燃焼方式:直接熱することで生じる水蒸気でタービンを回す
● 熱分解ガス化方式:高温の熱処理でガス化し、発電する
● 生物化学的ガス化方式:微生物の発酵作用により生じたメタンなどを燃料とする

産業廃棄物を共同処理する

企業がサーマルリサイクルに取り組む方法に、産業廃棄物を共同処理する方法も挙げられます。

共同処理とは、複数の事業者から排出される産業廃棄物をまとめて処理する手法です。

共同処理をしてサーマルリサイクルを行えば、個々の事業者が単独で廃棄物処理を行うよりも、コスト削減や効率化に期待できるでしょう。

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