
有害な物質を含む産業廃棄物は、適切な処理を行わないと大気汚染や水質汚濁、土壌汚染などの環境問題を引き起こします。人体や生態系への悪影響を防ぐために、廃棄物処理法では処理責任を負う事業者や遵守すべき手続きを定めています。
排出事業者や収集運搬業者、処分業者は、契約書の作成やマニフェストの交付をはじめ、所定の手続きを守らなければなりません。
本記事では、産業廃棄物が引き起こす問題や法律の規定、事業者の責務について解説します。
排出量や不法投棄の件数など、廃棄物業界の現状も分かるためぜひご一読ください。
目次
廃棄物処理法とは?
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は、生活や事業活動の中で排出された廃棄物の処理方法を定めた法律です。
廃棄物の排出を抑制しつつ、公衆衛生の向上や生活環境を保全することを目的に、廃棄物の適切な処理について取り決めています。
排出事業者は、事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければなりません。
産業廃棄物の処理を収集運搬業者や処分業者に委託しても、万が一委託した処理業者が不適正処理や違法行為を行えば、委託した側である排出事業者も責任も問われることとなります。この考えを「排出者責任」と呼んでいます。
一般廃棄物との違い
産業廃棄物とは事業活動の過程で生じた廃棄物です。廃棄物処理法で20種類の品目が列挙されていて、具体的には汚泥や動物のふん尿、がれき類などが該当します。
一般廃棄物と産業廃棄物は対象や排出方法が異なるため、関係事業者は違いを知っておく必要があります。
一般廃棄物は人々の日常生活の中で排出され、健康被害や環境汚染などへの影響が少ないことが特徴です。また産業廃棄物は排出事業者や処分業者が処理責任を負う一方、一般廃棄物の責任主体は廃棄物が出た場所を管轄する地方自治体が担います。

日本の産業廃棄物の実態
環境省が公表した産業廃棄物の処理状況(2020年)によると、業種別で区分したときの排出量の上位5業種は次のとおりです。
業種 | 排出量 | 排出割合 | |
---|---|---|---|
1 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 9,932万トン | 26.6% |
2 | 農業・林業 | 8,237万トン | 22.0% |
3 | 建設業 | 7,821万トン | 20.9% |
4 | パルプ・紙・紙加工品製造業 | 3,063万トン | 8.2% |
5 | 鉄鋼業 | 2,118万トン | 5.7% |
また、廃棄物の種類ごとの上位3品目は次のとおりです。
業種 | 排出量 | 排出割合 | |
---|---|---|---|
1 | 汚泥 | 1億6,365万トン | 43.8% |
2 | 動物のふん尿 | 8,186万トン | 21.9% |
3 | がれき類 | 5,971万トン | 16.0% |
業種別では上位5業種が、種類ごとでは上位3品目が、総排出量の80%以上を占めています。産業廃棄物の処理状況を見ると、前年度と比較して、最終処分量が7万トン減少しました。それに伴い、再生利用量や減量化量も前年度から数百万トン単位で減少しています。
しかし、焼却処理の過程で排出される温室効果ガス(GHG)の排出量は、2018年度で3,782万トンでした。年ごとの推移は徐々に減りつつあるものの、減少の度合いは緩やかで、2009年以降ほぼ横ばいです。産業廃棄物の処分量が少なくなっていても、温室効果ガスの排出量は高止まりの状態が続いています。
※参考:公益社団法人日本産業廃棄物処理振興センター「廃棄物分野における地球温暖化対策について」 (入手日付2024-02-06)
※参考:環境省「産業廃棄物の排出・処理状況等(令和2年度実績)」 (入手日付2024-02-06)
産業廃棄物が起こす問題
産業廃棄物は収集運搬業者や処分業者が適切に処理しないと、さまざまな問題を引き起こします。悪臭による周辺環境への影響だけでなく、健康被害や大気汚染の要因でもあります。産業廃棄物による問題について具体的に見てみましょう。
焼却処理による大気汚染
産業廃棄物の焼却処理の過程で排出されるGHG(温室効果ガス)や、ダイオキシンによる大気汚染が懸念されています。
石油を燃料に廃棄物を燃やすため、二酸化炭素の発生は避けられません。大気中の温室効果ガスの含有量が増えれば、地球全体レベルで温度の上昇を引き起こします。生態系の変化や豪雨の強大化、海面水位の上昇など、環境に与える影響は計り知れません。
産業廃棄物の焼却では、土壌や水を汚染するダイオキシン類の発生にも注意が必要です。魚や牛、豚などの体内に取り込まれれば、食物連鎖を通して、人体にも有害物質が蓄積される危険があるのです。
最終処分場の残余年数の減少
中間処理を通して再生利用できないと判断された産業廃棄物は、最終処分場に持ち込まれます。しかし処分場の数や面積には限りがあり、現在のペースでごみが増え続けると、廃棄物を埋め立てするスペースがなくなると心配されています。
最終処分場の残余年数(既存の埋立地が満杯になるまでの年数)は2021年時点で23.5年です。これは20年足らずで埋立地がなくなることを意味します。
年間の排出量を上回るペースで新たな最終処分場を用意できなければ、状況の改善は難しいでしょう。処分場の建設は環境問題の影響もあり、地域の住民からの理解を得にくいことも難点です。
※:環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について」(入手日付2024-02-06)
不法投棄による環境汚染
産業廃棄物を捨てる場所がなくなれば不法投棄が増え、環境汚染が深刻化する可能性があります。そうなると、土壌汚染や水質汚濁などを引き起こし、人体や環境に悪影響を及ぼします。
産業廃棄物は廃棄物処理法で適切な処理手続きが規定され、排出事業者は最終処分に至るまで責任を負わなければなりません。手続きに伴うコストや手間を嫌がり、山奥や人目につかない場所に不法投棄する事業者が残念ながらいるのも問題です。
2021年度に新たに発覚した不法投棄件数は107件、不法投棄量は3.7万トンです。ピークだった2000年代に比べて大幅に件数は減少しているものの、5,000トン以上の大規模な事例もあり、依然として深刻な問題であることは変わりません。
※:環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和3年度)について」(入手日付2024-02-06)
産業廃棄物に関する違反行為
産業廃棄物の不適切処理による問題を防ぐため、廃棄物処理法ではさまざまな制限を設けています。ルールを守らないと違法行為と扱われ、懲役や罰金などの法的なペナルティの対象となります。
産業廃棄物の違反行為は主体が排出業者であっても、業務を受託した収集運搬業者や処分業者も罪に問われます。
意図せぬ違法行為を防ぐには、排出側も処理側も、双方に課された義務を正しく理解しなければなりません。
委託基準違反
委託基準とは、排出事業者が収集運搬業者や処分業者に産業廃棄物の処理を委託する際に守るルールです。主なポイントは「許可業者への委託」、「契約書の作成」、「マニフェストの交付」の3つです。
例えば産業廃棄物の処理を、無許可業者や許可証の期限が切れた業者に依頼すると、委託基準違反に該当します。産業廃棄物処理委託契約書の作成やマニフェストの交付を怠ることも違法行為です。
マニフェストを交付しない・虚偽記載する
産業廃棄物のよくある違反行為が、マニフェストの不交付や虚偽記載です。産業廃棄物の処理委託契約を締結する際、排出業者はマニフェストと呼ばれる産業廃棄物管理票を委託先に提出することが義務付けられています。
マニフェストの交付状況を報告しない
廃棄物処理法においては、排出した産業廃棄物の種類や排出量、マニフェストの枚数を定期的に都道府県に報告する義務が課されています。
対象期間は前年4月1日〜翌年3月31日までで、報告の期限は6月30日です。報告書の提出をしないときや、期限までに間に合わなかったときはペナルティを科せられます。
マニフェストを5年間保存していない
産業廃棄物のマニフェストは排出事業者・処理業者ともに5年間の保存義務が課せられます。
マニフェストは廃棄物の種類・運搬車・運搬先ごとに作成し、処理の委託を受けた処理業者は所定の期限までに排出事業者のもとへ返送します。排出事業者は送付の前にコピーを取り、5年間保管しておく必要があります。
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