産業廃棄物の廃プラスチック類とは?定義から処理・リサイクル方法、課題まで徹底解説

廃プラスチック類とは?含まれるごみは?処理方法も解説

廃プラスチックを含む産業廃棄物は、法律により排出事業者が責任を持って処分しなければならないと定められています。そのため、廃プラスチックの概要や処理方法などを正しく理解しておかなければなりません。

そこで本記事では、廃プラスチックに該当する製品や判断基準、処理問題などの詳細を解説します。記事後半では、廃プラスチックの処理方法や処分する際の注意点もご紹介するので、廃プラスチックの処理にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

廃プラスチック類とは?

廃プラスチック類とは、使用済みもしくは製造過程で不要となったプラスチック製の破片や切りくずなどです。このうち、事業活動に伴い発生するものは、産業廃棄物に分類されます。

廃プラスチックは日常生活はもちろん、事業活動に伴い大量に排出されます。2021年は使用済み製品が759万トン、生産・加工過程で発生するロスが65万トン、合計で824万トンが排出されました。このうち、一般廃棄物の排出量は419万トン、産業廃棄物は405万トンです。

廃プラスチック類は適切に処理されない場合、環境汚染の原因となったり、生態系に悪影響を与えたりする可能性があります。そのためリサイクルやエネルギー回収などを行い有効活用される他、埋め立て処理や単純焼却などの最終処理が施されます。

※参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-04).


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廃プラスチックに該当する製品

産業廃棄物に分類される廃プラスチック類には、以下の製品が該当します。

  • 合成ゴムくず(廃タイヤ含む)
  • 合成樹脂くず
  • 合成繊維くず
  • 発泡スチロール
  • PPバンド
  • 食品容器
  • ペットボトル
  • 事務用品

産業廃棄物の処理を委託する場合、産業廃棄物処理業の許可を取得した業者に依頼しなければなりません。上記で挙げた廃プラスチック類は、事業活動に伴い多くの事業場で発生するので、許可を有している適切な処分業者かをしっかり選定しましょう。

なお、PCBが付着もしくは封入されたものは「PCB汚染物」として特別管理産業廃棄物に分類されます。
特別管理産業廃棄物は、廃棄物処理法にて「爆発性や毒性、感染性が特に強く、環境や人体に大きな悪影響を与える恐れのあるもの」と定義されており、その収集や運搬、処理には許可が必要です。
特別管理産業廃棄物を発生させる事業場は、廃棄物処理法第12条の2第8項に基づき、特別管理産業廃棄物管理責任者の設置義務があります。
特別管理産業廃棄物管理責任者の資格の要件や取得の流れなどは、下記の記事で詳しく解説しているのであわせて参考にしてください。

産業廃棄物とそれ以外の判断基準

廃プラスチック類が産業廃棄物になるのか、それ以外の一般廃棄物に分類されるかの判断に迷ったことのある方もいるでしょう。産業廃棄物とそれ以外の判断基準は、その廃棄物が「事業活動に伴い発生したか否か」です。

製品の製造・加工プロセスで発生するプラスチック類や、梱包に使われる発泡スチロールやPPバンドなどは明らかに産業廃棄物だと判断できますが、中には判断に迷うものもあります。

例えば事業場から排出される、弁当箱やペットボトルなどのプラスチック製品などです。事業活動に伴い発生するという観点からは産業廃棄物に、事業内容そのものとは関係ないという視点からは一般廃棄物だと考えられるでしょう。

これらがどちらに分類されるかは、地区を管轄する自治体によって異なります。東京都の場合、ペットボトルは産業廃棄物に分類されます。弁当容器などのプラスチック製容器については、一般廃棄物として処理されることがありますが、産業廃棄物としてリサイクルされることが推奨されています。そのため、判断に迷う場合は、不明瞭な状態で処理を進めるのではなく、必ず自治体に確認しましょう。

※参考:公益財団法人「適正処理の基礎知識と産廃処理の実務に関する講習」(入手日付 2024-02-04)

廃プラスチック処理問題

廃プラスチック処理は「海洋汚染や生態系に悪影響を与えている」「バーセル条約により輸出処理が制限されている」などの問題を抱えています。それぞれの現状を見ていきましょう。

海洋汚染や生態系に悪影響を与えている

プラスチックは化学的に安定した構造であり、生分解性が低く人間がリサイクルや焼却などを行わない限り、基本的に自然界に残存し続けます。適切な処理がなされず放流されると海洋プラスチックごみとなり、海洋汚染や生態系に悪影響を与える原因となります。

2010年時点では、世界全体で年間800万トンもの廃プラスチックが海洋に流出したと推計されており、プラスチックごみの増加は世界中で取り組むべき課題となっています。

なぜ廃プラスチックの輸出が行われてきたのか

かつて日本国内で発生した廃プラスチックの多くが海外へ輸出されていた背景には、経済的な理由が存在します。 特に中国をはじめとするアジア諸国では、安価な労働力を背景に、輸入した廃プラスチックをリサイクルして新たな製品の原料とする需要がありました。 国内で処理するよりも輸出する方がコストを低く抑えられたため、多くの排出事業者や処理業者がこの方法を選択しました。

結果として、国内のリサイクル技術や設備の発展が遅れる一因となり、海外の受け入れ規制強化によって、国内処理体制の脆弱性が露呈する形となりました。

バーセル条約により輸出処理が制限されている

日本は2017年頃まで、廃プラスチックを資源として中国やタイ、ベトナムへと輸出していました。しかし汚染された廃プラスチックがバーゼル条約の規制対象となり、輸出相手国の同意が必要となったことを受け、輸出量は半分以下にまで減少しました。

バーゼル条約とは廃棄物の輸出入に関する国際的な環境協定で、日本は1993年に加入しました。
バーゼル条約により輸出処理が制限されているため、国内で廃プラスチックを処理する体制作りが今まで以上に重要となります。

※参考:外務省「バーゼル条約」(入手日付 2024-02-05)

廃プラスチックの処理方法

廃プラスチックの処理方法は、「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」などのリサイクルと、中間処分で減容化したうえで行う埋め立て処理に分けられます。
それぞれの処理方法の概要や特徴などを見ていきましょう。

マテリアルリサイクル

マテリアルリサイクルとは、材料リサイクルや材料再生などとも呼ばれる処理方法です。環境保護ができる他、資源を有効利用できたり、廃棄物の量を削減できたりする点がメリットです。

マテリアルリサイクルは、廃棄物を同じ製品の原料とする「レベルマテリアルリサイクル」と別の製品の原料とする「ダウンマテリアルリサイクル」に分類できます。ペットボトルを再びペットボトルの原料とするのがレベルマテリアルリサイクル、ペットボトルを衣類やラミネート包材の原料とするのがダウンマテリアルリサイクルの一例です。

その他マテリアルリサイクルにより生み出されるものは、文具のような小さな商品から、交通インフラを支える大掛かりの施設にまで多岐にわたります。

2021年に国内で排出された824万トンの廃プラスチックのうち、マテリアルリサイクルで処理された量は全体の21.4%に当たる177万トンです。

※参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-04)

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを原料やエネルギーとして再利用するために、化学処理を施すことです。このリサイクル方法では、廃プラスチックを炭化水素やガスなどの化合物や混合物へと分解します。

ケミカルリサイクルの主な手法には、以下が挙げられます。

  • 原料・モノマー化:化学反応により分解し、原料やモノマーに変換する
  • 熱分解:高温無酸素状態下で廃プラスチックを分解し、リサイクル原料を取り出す
  • ガス化:ガス化して水素や一酸化炭素などのガスを生成する
  • 溶解:廃プラスチックを加熱溶解し、液体と気体に分離させる
  • 油化:合成燃料や化学燃料として使用可能な工業用油に変換する
  • 高炉原料化:鉄の還元剤として利用する

2021年は、国内で排出された廃プラスチックのうち3.5%に当たる29万トンが、ケミカルリサイクルで処理されています。

※参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-04)

サーマルリサイクル

サーマルリサイクルとは、廃プラスチックを高温で熱分解し、その熱をエネルギー源として利用するリサイクル方法です。サーマルリサイクルでは、廃棄物の排出量を減少させつつ、廃プラスチックを燃料やガスなどの新たなエネルギー源として取り出せる点がメリットです。主な手法には、ごみ焼却熱利用、セメント原・燃料化、固形燃料化(RPF、RDF)などが挙げられます。このうち、ごみ焼却発電は近い将来の重要なエネルギー供給源として、改めて注目を浴びています。

廃プラスチックの多くはサーマルリサイクルで再利用され、2021年は廃プラスチックの総量の62%に当たる511万トンがこの方法で処理されました。

※参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-04)

埋め立て処理

埋め立て処理は、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル、熱回収(サーマルリサイクル)などで有効利用されなかった廃プラスチックを最終処分する手段です。
国内では埋立量は年々縮小しており、直近の公表値では2023年の埋立量は約24万トン(廃プラスチック総排出量の約3%)と報告されています。
一方で、廃プラスチック全体のうち有効利用(マテリアル・ケミカル・サーマル)に回された割合は高く、2023年の有効利用率は約89%でしたが、その大部分は熱回収に依存しているという構造的課題があります。
過去年と比較すると(例:2021年は埋立約45万トン=約5%)、埋立は減少しているものの、「焼却や熱回収に偏った再利用」から脱却し、素材循環(マテリアル/ケミカル比率の向上)を進める必要があります。

日本におけるリサイクルの現状と有効利用率

日本の廃プラスチックの有効利用率は比較的高く、プラスチック循環利用協会の報告によれば80%を超えています。 しかし、その内訳を見ると、約6割がサーマルリサイクル(熱回収)に依存しているのが現状です。
プラスチックを原料として再利用するマテリアルリサイクルや、化学原料に戻すケミカルリサイクルの割合は、合計しても25%程度にとどまります。
この状況を改善し、より高度な資源循環を目指すため、2022年に「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。
国は今後、サーマルリサイクルからマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルへの移行を推進していく方針を示しています。

廃プラスチックを処分する際の注意点

廃プラスチックは前述した処理方法で処分できますが、いくつか注意点があります。「処理にかかる費用を確認する」「廃棄物処理法に基づく処理をしている業者かを確認する」について見ていきましょう。

排出事業者の責任として分別を徹底する

排出事業者は、廃プラスチックを処分する際、リサイクルの品質向上と処理効率化のために適切な分別を行う責任があります。 具体的には、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)といった素材ごとの分別が求められます。 また、食品の残りかすや油などの汚れ、金属や紙といった異物が付着しているとリサイクルの妨げになるため、これらを可能な限り除去しなくてはなりません。 委託する処理業者によって分別の基準は異なるため、事前に業者のルールを確認し、それに従うことが適正処理の第一歩となります。

処理にかかる費用を確認する

廃プラスチックを処理するに当たっては、費用を確認しましょう。
廃プラスチックの処理は委託料の上昇により、全体のコストが上昇しているので、複数の許可業者から相見積もりを取るのがおすすめです。

廃棄物処理法に基づく処理をしている業者かを確認する

廃プラスチックの運搬や収集、処分を委託する際は、委託先が廃棄物処理法に基づいて適正な処理をしている業者かを確認しましょう。

産業廃棄物の処理は「排出事業者責任」という考えのもと、排出事業者が責任を持って処理しなければならないと定められています。処分許可業を取得していない業者に委託すると、委託した側も罰則が科されるため注意してください。

優良な業者か否かを判断するためには、著しく安い価格で受注していないか、実績は豊富か、優良産廃処理業者認定制度を受けているかなどをチェックしましょう。

廃プラスチックに関するよくある質問

廃プラスチックの処理を検討する企業の担当者からは、費用相場や廃棄物の区分など、実務的な質問が数多く寄せられます。
ここでは、特に問い合わせの多い「処分費用の相場」「一般家庭ごみとの違い」「排出業種の指定の有無」という3つの疑問点を取り上げ、それぞれ具体的に回答します。

これらの知識は、適正な廃棄物処理とコンプライアンス遵守のために不可欠です。

廃プラスチックの処分費用の相場は?

廃プラスチックの処分費用は、収集運搬費と処分費で構成され、一概に決まった価格はありません。処分費の一般的な相場としては、1kgあたり30円から110円程度とされていますが、これはあくまで目安です。

実際の費用は、プラスチックの種類(単一素材か混合か)、汚れや異物の付着度合い、排出量、地域、そして委託する処理業者によって大きく変動します。例えば、リサイクルしやすい状態の良いプラスチックは安価に、あるいは有価で引き取られるケースもある一方、処理が困難な混合プラスチックは高額になる傾向があります。正確な費用を把握するためには、必ず複数の業者に個別で見積もりを依頼することが重要です。

一般家庭から出るプラスチックごみも産業廃棄物になる?

一般家庭の日常生活から排出されるプラスチック製の容器包装や製品は、「一般廃棄物」に分類されます。
これらは、お住まいの市町村が定める分別ルールに従って処分する必要があり、産業廃棄物としては扱われません。

一方で、産業廃棄物としての「廃プラスチック類」は、あくまで企業の工場、オフィス、店舗といった事業活動に伴って排出されたものに限定されます。
たとえ同じペットボトルであっても、家庭から出れば一般廃棄物、事業所から出れば産業廃棄物となり、排出主体によって法的な区分と処理方法が明確に異なります。

廃プラスチックの排出に業種の指定はある?

産業廃棄物の中には、特定の業種から排出された場合にのみ該当する品目もありますが、「廃プラスチック類」に関しては業種の指定がありません。
これは、あらゆる事業活動から排出されるすべての廃プラスチックが、産業廃棄物に該当することを意味します。

例えば、製造業や建設業はもちろんのこと、IT企業のオフィスから出るOA機器のプラスチック部品、飲食店の食品トレイ、小売店の梱包材など、業種を問わず事業に伴って生じたプラスチックごみは、すべて産業廃棄物として法律に基づいた適正な処理が義務付けられています。

まとめ

廃プラスチック類は、事業活動から排出される合成高分子系化合物の総称であり、廃棄物処理法上の産業廃棄物に分類されます。
不適切な処理は海洋汚染などの環境問題を引き起こすため、排出事業者はその責任を自覚し、適正な処理フローを構築しなければなりません。
処理方法にはマテリアル、ケミカル、サーマルといったリサイクル手法があり、資源の有効活用が求められます。

処分にあたっては、分別を徹底し、許可を持つ専門業者に委託することが法的に不可欠です。
プラスチック資源循環促進法の施行など、今後も規制や社会の要請は変化するため、常に最新の情報を把握し対応していく必要があります。

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