
2030年までのSDGsの目標達成や、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルなど、資源を有効活用するための取り組みは日本だけでなく世界全体で行われています。
こうした取り組みのキーワードとなるのが「サーキュラーエコノミー(循環経済)」です。サーキュラーエコノミー(循環経済)は、有限である資源を将来の世代に残しつつ、現在の生活も豊かにするために重要な概念です。
本記事では、サーキュラーエコノミー(循環経済)の概要や貢献するメリット、課題を解説します。記事後半では、サーキュラーエコノミー(循環経済)を実現させるためのポイントもご紹介するので、併せて参考にしてください。
目次
サーキュラーエコノミー(循環経済)とは?
サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、資源を効率的に循環させ、持続可能な社会を実現する経済モデルで、リニアエコノミー(Linear economy:直線型経済)に変わる経済モデルとして注目を集めています。
リニアエコノミーとは、大量生産・大量消費・大量廃棄に依存する経済モデルです。消費された資源をリサイクル・リユースせずに廃棄するため、このように呼ばれています。このような直線型の経済モデルでは、資源やエネルギーの不足、環境汚染、地球温暖化、廃棄物の大量排出など多くの点が問題となります。
サーキュラーエコノミー(循環経済)は、製品や商品をそのまま廃棄せず、リサイクルやリユースを行うことで資源の消費を抑えつつ、廃棄物の排出量を削減することが可能です。
もちろん良い面ばかりではなく、政府や企業、個人の協力が必要であったり、全ての事業に取り入れることが困難であったりするなどの課題があります。
サーキュラーエコノミー(循環経済)への理解を深めるために、サーキュラーエコノミーの3原則や、混同されがちなリサイクル・リユースとの違いを詳しく見ていきましょう。

サーキュラーエコノミーの3原則
サーキュラーエコノミー(循環経済)の国際的な推進団体である、イギリスのエレン・マッカーサー財団は、この経済モデルの3原則として以下を挙げています。
- 廃棄物や汚染を排除する
- 製品・資材を価値の高い状態を保ったまま循環させる
- 自然を再生する
1つ目の原則は、廃棄物や汚染を排除することです。製品や商品の設計段階から、そもそも廃棄物や汚染をなるべく出さないことを重要視します。
2つ目の原則は、製品・資材を価値の高い状態を保ったまま循環させることです。製品・資材を可能な限り長く使用し続け、新たな資源の消費を抑えます。
3つ目の原則は、自然を再生することです。リニアエコノミーでは自然から得られる資源は減っていく一方ですが、サーキュラーエコノミー(循環経済)では資源をすぐには廃棄せず循環させ、自然の再生プロセスを支えます。
リサイクル・リユースとの違い
サーキュラーエコノミー(循環経済)とリサイクル・リユースは、いずれも循環型社会の構築には欠かせない概念ですが、アプローチ手法と目的に違いがあります。
3R(Reduce・Recycle・Reuse)の一部であるリサイクルとリユースは、使用済み製品を材料に戻したり再利用したりする取り組みですが、廃棄を前提としています。
サーキュラーエコノミー(循環経済)は、製品の設計段階からそもそも廃棄物を排出しないことを重要視している点が、リサイクル・リユースとの大きな違いです。排出した後もリサイクルやリユースを行い、環境負荷を低減させつつ資源を有効活用します。
また、サーキュラーエコノミー(循環経済)には3Rに「Refuse(リフューズ)」と「Repair(リペア)」の2つのRが加わっています。
Refuse(リフューズ)とは、不要なものを買わない・もらわないようにして廃棄物を排出しないことです。「過剰な包装は断る」「一時的に使用するものは、シェア・レンタルサービスを使う」などの対策が挙げられます。
Repair(リペア)とは、壊れたものをすぐに廃棄せず、修理して再び使用することです。修理可能なデザインの設計、充実したアフターサービスの提供などが、生産者側には求められます。
サーキュラーエコノミー(循環経済)はこれら5Rを内包した概念だといえるでしょう。
サーキュラーエコノミー(循環経済)に貢献するメリット
サーキュラーエコノミー(循環経済)に貢献するメリットは、以下の通りです。
- 資源を有効活用できる
- 新たなビジネスチャンスにつながる
- SDGsに貢献できる
それぞれのメリットを詳しく解説するので、自社で取り組むとどのような効果が得られるのか、社会にどれほどの影響を与えられるのかを知る参考としてください。
資源を有効活用できる
大量生産・大量消費・大量廃棄に依存する経済モデルは、確かに人々の暮らしを豊かにしましたが、それに伴い多くの弊害が生じているのも事実です。特に対策が必要になるのが、資源不足や大量消費に伴う廃棄物増加、環境汚染などです。
サーキュラーエコノミー(循環経済)を推進すると、資源を有効活用できます。この経済モデルでは、製品や商品を繰り返し利用することを前提に設計しており、廃棄物の排出量を最小限に抑えられるためです。
その結果、資源の節約と持続可能性、そして環境負荷の低減を同時に実現できます。
また、廃棄してしまうものでも、再利用やリサイクルにより新たな資源の採掘やエネルギーの消費を抑えられます。
新たなビジネスチャンスにつながる
サーキュラーエコノミー(循環経済)は、新たなビジネスチャンスを生み出せる大きな可能性を秘めています。
サーキュラーエコノミー(循環経済)を実現するためには、製品・商品の設計段階から、生産、廃棄に至るまでの一連の流れで持続可能な仕組みの構築が欠かせません。企業は、再利用やリサイクルなどの手段を通じて、資源を有効活用していくことが求められます。
このプロセスで、新たな技術の開発や革新的なアイデアが生まれ、新たなビジネスチャンスが創出されます。
例えば個人間で使用済みの物品の販売と購入ができるフリマアプリは、廃棄物の量を削減しつつ資源を有効活用できるビジネスモデルの一例です。
また、資源を循環させることで新たな産業が生まれる可能性がある点もメリットに挙げられます。従来のビジネスモデルが発展し、新たな市場が形成されることに期待できるでしょう。
SDGsに貢献できる
サーキュラーエコノミー(循環経済)を推進すると、SDGsに貢献できる点もメリットです。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで採択された国際的な開発目標です。地球上の誰一人として取り残さないことを掲げたSDGsは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されており、17のゴールと169のターゲットからなっています。
サーキュラーエコノミー(循環経済)と関連が深いのは、以下の開発目標です。
- 開発目標12「つくる責任つかう責任」
- 開発目標13「気候変動に具体的な対策を」
- 開発目標14「海の豊かさを守ろう」
- 開発目標15「陸の豊かさも守ろう」
SDGsの開発目標12「つくる責任つかう責任」は、持続可能な生産と消費を推進しています。サーキュラーエコノミー(循環経済)は、製品の設計段階から廃棄しないことを前提としており、使用済みとなった後も再利用やリサイクルにより、長期間使用できることを可能にします。
SDGsの開発目標13は、「気候変動に具体的な対策を」です。サーキュラーエコノミー(循環経済)の実施により、資源の効率的な利用が促進され、生産プロセスにおける資源とエネルギーの消費を削減できます。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出も抑えられるため、気候変動に効果的です。
SDGsの開発目標14と15の「陸の豊かさも守ろう」「陸の豊かさも守ろう」は、サーキュラーエコノミー(循環経済)と深い関連性があります。サーキュラーエコノミー(循環経済)の推進により廃棄物の排出量を抑えることが、生態系の保護につながるためです。
サーキュラーエコノミー(循環経済)の課題
サーキュラーエコノミー(循環経済)はメリットだけでなく、課題を抱えているのも事実です。主な課題には、以下が挙げられます。
- 取り入れるのが難しい事業がある
- リサイクルできる素材しか使えない
- 品質を保つのが難しい
それぞれの課題を詳しく解説するので、サーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組む際の参考にしてください。
取り入れるのが難しい事業がある
サーキュラーエコノミー(循環経済)は、全ての事業に取り入れられるわけではなく、実践が難しい事業がある点が課題です。
サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現には、「廃棄物を減らす」「環境に優しい素材を用いる」などの考え方が重要ですが、これらだけで完全な循環モデルが実現するわけではありません。製品の設計から製造、消費、回収、リユース、リサイクルに至る全てのプロセスで、サーキュラーエコノミー(循環経済)を実現できる取り組みを実施する必要があります。
これらを高い水準で実施するには、高度な技術や整ったインフラが求められます。こうした条件がそろっていない発展途上国では、実施が難しいのが現状です。
加えて、コストの問題もあります。資源の有効活用と循環を促進するために多くのコストが発生するので、構築に関するコストが得られるリターンを上回るようであれば、ビジネスモデルとしての発展性は見込めないでしょう。
リサイクルできる素材しか使えない
サーキュラーエコノミー(循環経済)の課題に、リサイクル可能な素材しか使用できない点も挙げられます。そのため、「製品・商品デザインに制約がかかる」「リサイクル素材の継続的な供給が必要である」などの弊害が生じます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
リサイクル可能な素材のみを材料に用いると、製品・商品デザインに制約がかかります。廃棄しないことを前提としており、分解が容易な設計にしたり、素材を限定したりする必要があるためです。
また、リサイクル素材の継続的な供給が必須です。日本は比較的分別回収やリサイクルの仕組みが整っていますが、リサイクルプロセスが構築されていない地域では、安定的な供給は難しくなります。回収の仕組みが整っていない素材についても、同様です。
品質を保つのが難しい
サーキュラーエコノミー(循環経済)の考えのもと生み出される製品・商品は、品質を保つのが難しい点も大きな課題です。
例えばプラスチックは、リサイクルする過程で不純物が混ざり劣化します。リサイクルを繰り返し長期にわたって使用し続ける場合、新素材から製造された場合と同等の品質を保つことは難しいでしょう。
サーキュラーエコノミー(循環経済)を実現するためのポイント
サーキュラーエコノミー(循環経済)を実現するためのポイントは、以下の通りです。
- 廃棄しない前提の素材を使う
- 商品を回収するルートを作る
- 他社の協力を得る
- 活動内容を発信する
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
廃棄しない前提の素材を使う
サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現のためには、製品・商品の設計やデザイン段階での工夫が欠かせません。特に、廃棄しない前提の素材を用いることが重要です。
例えば、再生利用可能な素材や修理・修繕が容易な素材を用いるなどの対策が挙げられます。
製造業以外の場合は、材料を調達する段階でリサイクルやリユースを意識したものを選ぶなどで実現に貢献できます。
商品を回収するルートを作る
サーキュラーエコノミー(循環経済)では、再利用もしくはリサイクルした素材を繰り返し用いることが重要視されます。そのため、商品を回収するルートやシステムを確立させることも、実現する上で重要なポイントです。
適切なリサイクルインフラを構築できれば、資源の回収と再利用をスムーズに実行できます。
他社の協力を得る
一企業としてだけでなく、他社からの協力を得てサーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に向けて動き出すことが欠かせません。自社だけで循環モデルを構築するのは、困難なためです。
例えば製造業の場合、自社で再生資源を集め、市場に流通させるのは専門外なので難しいでしょう。その場合は、環境に優しい素材を生産する企業、製品を流通させる企業、使用済みの製品を回収しリサイクルする企業などの連携が重要です。
活動内容を発信する
サーキュラーエコノミー(循環経済)はまだ発達途中で、企業や消費者の認知度も決して高いとはいえません。そのため、活動内容を発信し、サーキュラーエコノミー(循環経済)の内容や具体的な効果を拡散していくことが求められます。
またこうした活動内容を発信すれば、「環境に優しい企業」「持続可能な社会を目指す企業」だという、ポジティブな印象を抱いてもらえる可能性も高まるでしょう。
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