廃棄物データシート(WDS)とは?提出を求められる産業廃棄物や実際の記入例を徹底解説

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廃棄物処理法において、排出事業者は委託する廃棄物に関する情報を、処理業者へ提供するよう定められています。情報提供をスムーズかつ正確に実施するために用いられるのが、廃棄物データシート(WDS:Waste Data Sheet)です。事業活動に伴い産業廃棄物が排出される事業場に携わっている方は、詳細を把握しておくことが重要です。

そこで本記事では、廃棄物データシート(WDS)の概要や提出が求められる産業廃棄物、処理業者へ伝えるべき情報をご紹介します。記事後半では、廃棄物データシート(WDS)の記載項目もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

廃棄物データシート(WDS)とは?

廃棄物データシート(WDS)とは、廃棄物の適正処理に必要な注意事項等の各種データを記した書類です。廃棄物特有の情報を処理業者へ提供することで、法令の順守や事故防止のために役立てられます。詳しくは後述しますが、排出事業者名称や廃棄物の名称・種類、廃棄物の物理的・化学的性状、特別注意事項などさまざまな項目を記載します。

廃棄物データシート(WDS)の提出は義務?

廃棄物処理法で定められているのは、あくまで「廃棄物の情報を処理業者に伝えなければならない」ということであり、廃棄物データシート(WDS)の提出自体は義務ではありません。

しかし、廃棄物データシート(WDS)には法令に準じた多くの情報がそろっているため、廃棄物をより適正に処理しやすくなります。排出事業者としての責任を全うするためにも、積極的に活用するのがよいでしょう。

環境省のWebサイトでは、廃棄物データシート(WDS)のガイドライン及びフォーマットが公開されています。

環境省「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」


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廃棄物データシート(WDS)の情報不足によって起きた事件

廃棄物データシート(WDS)の情報不足によって起きた事件として有名なのが、2012年(平成24年)に利根川水系の浄水場で国の基準値を超えるホルムアルデヒドが検出された事件です。

ホルムアルデヒドには人の粘膜を刺激する作用があり、暴露されると、目がチカチカする・鼻水が出る・のどが渇く・痛みや咳が出るなどの症状が現れます。

この事件は、排出事業者が提供したホルムアルデヒドが含まれる廃液の情報に不備があったことが原因です。ホルムアルデヒドの前駆物質であるヘキサメチレンテトラミン(HMT)が高濃度で含まれていることが処理業者に伝わっておらず、それがそのまま河川に放流されました。

ヘキサメチレンテトラミンは情報提供が必須の物質ではなかったため、違法行為にはなりませんでしたが、埼玉県企業局・東京都水道局・茨城県企業局・群馬県企業局・千葉県に対して損害賠償額を支払うこととなりました。

※参考:茨城県企業局「ホルムアルデヒド検出に係る損害賠償請求訴訟の和解について」 ,(入手日付2024-05-14).

廃棄物データシート(WDS)の提出が求められる産業廃棄物

廃棄物データシート(WDS)の提出が求められる主な産業廃棄物には、以下が挙げられます。

  • 汚泥
  • 廃油
  • 廃酸・廃アルカリ
  • その他有害物質

これらはいずれも、その性状や含有物質が健康や自然環境に悪影響を与える恐れがあるものです。見た目からは有害特性を判断するのが難しいため、処理業者が適正処理できるように、排出事業者には正確な情報の提供が求められます。

産業廃棄物の処理業者へ伝えるべき情報

排出事業者が処理業者へ伝えるべき情報には、以下が挙げられます。

  • 廃棄物の性状:物理的・化学的な性質
  • 荷姿:廃棄物の包装形態
  • 保管状況下での状態:腐敗しているか、揮発等当該産業廃棄物の性状に変化はあるかなど
  • 他の廃棄物との混合:混合による支障の有無
  • 有害物質の含有:石綿(アスベスト)の含有がある場合
  • その他:特筆すべき事項があれば記載

廃棄物データシート(WDS)の記載項目

WDS

ここからは、実際に環境省が提供するフォーマットに沿って、廃棄物データシート(WDS)の記載項目を詳しく見ていきましょう。(記載例は溶剤蒸留残さ汚泥)

出典:環境省「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」

排出事業者名称

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

排出事業者名称の欄には、事業者名と所在地住所、所属、担当者の氏名、電話番号・FAX番号を記載します。

緊急連絡先ともなるので、確実に連絡が取れる電話番号を記載しましょう。

廃棄物の名称

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

廃棄物の具体的な名称や呼び名を記載します。ここでは、廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)により定義されている20種類の廃棄物の名称にこだわる必要はありません。

廃棄物の組成・成分情報

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

廃棄物の組成・成分情報は、その比率が高いと思われる順に記載します。予想される数値にばらつきがある場合は、「苛性ソーダ(NaOH):30〜40%」のように、幅を持たせて記載してください。商品名ではなく物質名に統一し、微量物質であっても重要であると思われるものは記載しましょう。

また、MSD(Material Safety Data Sheet : 化学物質等安全データシート)がある場合は、そのCAS番号も記載します。

廃棄物の種類

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

この欄では、廃棄物の種類を記載します。

産業廃棄物は、汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリに分けられており、石綿(アスベスト)・水銀・水銀含有ばいじんのいずれかに該当する場合は、特記してください。

爆発性・感染性・中毒性が特に高く、健康や自然環境に大きな悪影響を及ぼす可能性のある特別管理産業廃棄物も同様に、いくつかある項目から選んでレ点を入れます。

特定有害物質

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

法律により埋立の際の検出基準値が定められている特定有害物質の欄では、混入ありは「◯」、なしは「✕」、混入の可能性があれば「△」を記載します。

PRTR 対象物質

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

  PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)とは、有害性のある化学物質がどの事業場からどれだけ排出されたかを集計し、公表する制度です。

委託する廃棄物が対象物質を含んでいるかを、該当・非該当から選びます。また、第1種指定化学物質を含む場合は、その物質名も記載します。

水道水源における消毒副生成物前駆物質

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

この欄では、塩素処理によりホルムアルデヒドやクロロホルムを発生させる前駆物質があるかをレ点でチェックします。先述したヘキサメチレンテトラミンなどが含まれている場合は、チェックしてください。

その他含有物質

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

その他、硫黄・塩素・臭素・要素・フッ素・硝酸・アンモニアなど、含有していることが問題になり得る物質の有無が列挙されています。

特定有害物質と同様に、混入ありは「◯」、なしは「✕」、混入の可能性があれば「△」を記載します。

有害特性

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

爆発性や引火性、可燃性、急性毒性、慢性毒性、重合反応性などの有害特性にチェックを入れます。有害特性がない場合は「無」に、不明な場合は「不明」に丸を付けます。

廃棄物の物理的・化学的性状

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

廃棄物の物理的・化学的性状では、形状や臭い、比重、pH、沸点、融点などを記載します。

全ての項目を必ずしも埋める必要はありませんが、適正処理に欠かせない情報は漏れなく記載しましょう。例えば、廃酸や廃アルカリならpHなどです。

品質安定性

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

経時変化の有無を選択し、変化する場合は具体的に記載します。

関連法規

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

廃棄物は廃棄物処理法以外にも、以下の法律や規則による規制を受ける場合があります。

  • 消防法
  • 労働安全衛生法
  • 毒物及び劇物取締法
  • 悪臭防止法
  • 特定化学物質障害予防規則

該当する法規がある場合は、丸で囲みます。

荷姿

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

廃棄物を保管している容器や車両、その他荷姿に関して特筆すべき事項を記載します。

排出頻度・数量

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

この欄では、頻度がスポットなのか継続予定なのかに丸を付けます。

具体的な数量を記載し、継続予定の場合は具体的に依頼間隔も記載してください。

特別注意事項

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

取り扱いに関して特別な注意事項を記載します。

  • 避けるべき処理方法
  • 安全のために実施すべき処理方法
  • 他の廃棄物との混合禁止
  • 粉じん爆発の可能性
  • 容器を腐食する可能性
  • 性状変化により環境汚染が引き起こされる可能性
  • 環境中に流出した際の影響(消毒用塩素と化学反応を起こし、水道取水障害が引き起こされるなど)

その他の情報

廃棄物データシート(WDS)記入例
(記入例)

その他、サンプルの有無や特記事項などがあれば記載します。

廃棄物が発生した工程については、産業廃棄物がどのようにして製造されたかや、排出場所、使用原材料や副産物について、可能な限り詳細に記述します。これにより、不純物の混入の可能性や成分のばらつきを推定しやすくなり、スムーズな処理や事故の防止に繋がります。

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