
「軽量で丈夫」「耐久性と加工性が高い」「大量生産しやすい」などの理由から、いたるところでプラスチックは活用されています。しかし、便利な反面、プラスチックに起因するさまざまな問題が深刻化しているのも事実です。
本記事では、プラスチックごみの詳細や海洋プラスチックごみ問題、生態系や人体に及ぼす悪影響などを解説します。記事後半では、マイクロプラスチックの詳細や、プラスチックごみが問題視されている背景、問題解決に向けた取り組みなども解説するのでぜひ参考にしてください。
目次
プラスチックごみ問題とは?
プラスチックは加工しやすく丈夫で、身の回りのいたるところで活用されています。
人々の生活を支えているといっても過言ではないプラスチックですが、今世界中で「プラスチックごみ問題」が深刻化しています。主なプラスチックごみ問題は、以下の通りです。
● CO2の排出
● 化石燃料の枯渇
● 海洋汚染
それぞれのプラスチックごみ問題の詳細を見ていきましょう。
CO2の排出
プラスチックは、その生産・消費プロセスで多量の二酸化炭素を排出するのが問題です。
プラスチックは、主に石油や天然ガスなどの化石燃料を原料としています。化石燃料の採掘や精製、加工のプロセスでエネルギーが必要です。
石油を原料とする場合、精製してナフサを製造し、そこからプラスチックの原料であるエチレン・プロピレンを製造して、プラスチックの原型が作られます。この過程では多くのエネルギーが必要であり、それに伴い大量の二酸化炭素が排出されます。
また、使用済みのプラスチックは、リサイクル・埋め立て・焼却などにより処分されますが、焼却した場合に多量の二酸化炭素が排出されるのも無視できない影響です。
化石燃料の枯渇
プラスチックを生産する際、石油や天然ガスなどの化石燃料が原料となります。大量のプラスチックを生産し続けると、化石燃料の枯渇が助長されるのではないかと懸念されています。
世界規模でプラスチックの生産・使用量は年々増加しており、2020年の生産量は約3億6,000万トンです。今後もさらに増加するとされており、化石燃料の使用量は増え続けるでしょう。
化石燃料はプラスチックの生産のみならず、火力発電の原料、自動車や航空機器の燃料、都市ガス、化学繊維の原料などさまざまな場面で用いられています。化石燃料が枯渇すると、エネルギー供給が不安定になり多くの産業に影響が及ぶため、現代社会の生活基盤が揺らぐ可能性があるでしょう。
※参考:日本財団(入手日付 2024-12-27).
海洋汚染
プラスチックごみの不法投棄による海洋汚染は、世界中で深刻な問題となっています。
世界では、毎年数百万トンものプラスチックごみが海に流れ込んでいます。プラスチックは紫外線や海水の影響を受けて細かく粉砕されることはあっても、化学的には分解されにくく、自然界に長期間残り続けるのが問題です。このままのペースでプラスチックが海洋に捨てられ続けると、2050年 には魚より海洋ごみの量の方が多くなるというショッキングな予測も発表されています。
プラスチックによる海洋汚染は、海洋生態系に悪影響を及ぼすだけでなく、海の生き物を食べる人間にも波及します。また、水産業や観光業の低迷による経済的損失も無視できません。
海洋に放出されたプラスチックごみの影響に関しては、後ほど詳しく解説します。
海洋プラスチックごみ問題とは?
海洋プラスチックごみ問題とは、不法投棄されたレジ袋やペットボトル、漁業網などのプラスチックごみが適切に処理されず、河川などを通じて海に流出することで発生する環境問題です。
プラスチックは自然分解される生物由来の材料と異なり、微生物の働きでもなかなか分解されません。そのため、数十年から数百年単位で地球上に存在し、自然環境に大きな悪影響を及ぼします。
海洋プラスチックが生態系に与える影響は計り知れません。海に住む生物が、漂流するプラスチックごみを食べて窒息したり、絡まったりして命を落とす事例もあるほどです。
また、長期間残存し続けることで細かく粉砕されて生じる「マイクロプラスチック」も、深刻な問題を引き起こします。マイクロプラスチックは食物連鎖の過程で、人間の健康への悪影響が示唆されています。
海洋プラスチックごみが与える影響
海洋プラスチックごみは、以下のような影響を及ぼします。
● 生態系への悪影響
● 人間の体内に入り込むことによる健康被害
● 漁業や観光業における経済的損失
それぞれの影響を詳しく見ていきましょう。
生態系への悪影響
海洋プラスチックごみは、生態系に深刻な悪影響を及ぼします。
例えば、海洋に漂流するプラスチックごみが魚類やウミガメ、クジラなどの生物の体に絡んで、けがをしたり最悪の場合、命を落としたりします。餌と間違えて誤って飲み込み、窒息死するケースもあり、その影響は深刻です。
また、小さなプラスチック片を飲み込むと、消化器官に炎症を起こしたり、腸閉塞(腸管がふさがれること)になったりします。
さらに、海洋生物が生活圏としている海域に多量のプラスチックごみが漂っていると、障害物となり移動の妨げになるのも問題です。餌の確保や繁殖のために季節や時期に応じて移動する海洋生物は、この影響をダイレクトに受けてしまいます。
こうした海洋プラスチックごみの影響により、絶滅の危機に瀕している海洋生物は増えているとされています。
人間の体内に入り込むことによる健康被害
海洋プラスチックごみは、海の生態系だけでなく、人々の健康にも被害を及ぼします。特に問題視されているのが、マイクロプラスチックです。
マイクロプラスチックは微小なプラスチック片であり、海洋生物に摂取された後、食物連鎖で人間の体内に取り込まれるリスクがあります。プラスチックは人間の体内でも当然分解されないため、排泄されない限り蓄積するのが問題です。
マイクロプラスチックが血管や消化器官に入ると、アレルギー反応や免疫系の異常を誘発します。人体への影響が完全には解明されているわけではありませんが、さまざまな健康障害を引き起こすとされており、その影響は無視できないでしょう。
マイクロプラスチックの詳細は、後ほど詳しくご紹介します。
漁業や観光業における経済的損失
海洋プラスチックごみは、漁業や観光業など海洋資源に依存している産業に大きな経済損失をもたらします。
漁業では、海洋プラスチックごみが漂っていると、漁具に絡まり漁業活動の効率が低下します。海洋プラスチックごみは生態系に直接的なダメージを与えているので、それも相まってより漁獲量は低下するでしょう。
海洋プラスチックごみが漂流して海の景観が損なわれると、観光客にとっての魅力も落ちます。そうなると観光業は多大なダメージを受けてしまうでしょう。
こうした海洋プラスチックごみによる経済損失は、経済協力開発機構(OECD)によると全世界で年間130億ドル(2018年当時の日本円で約1兆4,000億円)に上るとされています。
※参考:日本経済新聞(入手日付 2024/12/26).
マイクロプラスチックの種類
マイクロプラスチックとは、小さく粒状に砕かれたプラスチックです。大きさは5mm以下と、マイクロレベルの大きさのためこの名前が付いています。
マイクロプラスチックは大きく分けて、1次的マイクロプラスチックと2次的マイクロプラスチックに分けられます。それぞれの概要を詳しく見ていきましょう。
一次的マイクロプラスチック
一次的マイクロプラスチックとは、製造段階で直径5ミリ以下の大きさとして生産されたプラスチックです。
一次的マイクロプラスチックは、マイクロビーズとして化粧品や洗顔料、歯磨き粉などの日用品に含まれています。マイクロビーズとはミクロン単位の小さな球状のビーズで、古い角質を削り取るスクラブや、質感を滑らかにするための乳化剤などが主な用途です。従来は自然由来の果実が材料に用いられていましたが、安価で大量に生産できるため、今ではプラスチックが用いられるようになっています。
一次的マイクロプラスチックの問題なのは、製造段階で意図的に小さく作られているため、ろ過して取り除くのが難しく回収が困難な点です。そのまま河川や海に流されてしまいます。
二次的マイクロプラスチック
二次的マイクロプラスチックとは、プラスチック製品が紫外線や波の作用などの外的要因で劣化・摩耗し、細かく砕かれることで生じる微小なプラスチックです。一次的プラスチックよりも、総量が多いとされています。二次的マイクロプラスチックの元となるプラスチック製品には、以下のものが挙げられます。
● ペットボトル
● ビニール袋・レジ袋
● タバコのフィルター
● 発泡スチロール
● 釣り糸・ロープ・漁網などの漁業道具
廃棄物として適切に処理されなかったプラスチック製品は、二次的マイクロプラスチックへと分解されます。一次的マイクロプラスチックと異なり、発生を未然に防ぐことが可能なので、適切に分別してリサイクル処理を行ったり、不法投棄を厳しく取り締まったりするなどの対策が必要です。
プラスチックごみが問題視されている理由
プラスチックごみが問題視されている理由には、「プラスチックは自然分解されないから」「プラスチックの生産・使用量が増加しているから」の2つが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
プラスチックは自然分解されないから
プラスチックごみがこれだけ問題視されるのは、プラスチックそのものが自然分解されないためです。
化石燃料を原料とするプラスチックは人工的に合成された高分子化合物であり、物理的に細かく砕かれても、自然環境下では分解されません。そのため、焼却しなければ長期間残存することになりますが、処理時には二酸化炭素などの温室効果ガスやダイオキシン類などの有毒ガスが発生します。木材をはじめとする生物由来の天然資源の場合、微生物により最終的には二酸化炭素と水にまで分解される点と比較すると、いかに環境に悪影響を与えているかが分かるでしょう。
環境に配慮した「生分解性プラスチック」もありますが、「製造コストが高い」「分解条件が厳しい」「耐久性や強度に劣る」などの理由から、普及率は低迷したままです。
プラスチックの生産・使用量が増加しているから
プラスチックの生産・使用量が増加している点も、プラスチックごみが問題視されている理由の一つです。
軽量で耐久性や加工性に優れていることから、日用品から工業製品まで幅広い分野で使用されています。世界規模で年々生産量は増加しており、2000年代初頭は2億トンだったのが、2022年には4億トンを超えています。今後も生産量は増加する見込みです。
生産量が増えれば当然、廃棄される量も増えます。その結果、海洋プラスチックごみや二酸化炭素の排出、マイクロプラスチックの増加などの問題が引き起こされます。
※参考:statista.(入手日付 2024-12-27).
プラスチック問題の解決に向けた取り組み
プラスチック問題の解決に向けて、以下のような取り組みが行われています。
● プラスチックスマート
● プラスチック資源循環戦略
● 海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
● プラスチックオフセット
● 各国でのプラスチック規制
● 代替プラスチックの利用
プラスチックスマート
プラスチックスマート(Plastic Smart)とは、「プラスチックとの賢い付き合い方」をテーマに環境省が立ち上げたプロジェクトです。プラスチックごみ問題の解決に向けて、個人
・企業・自治体レベルでの取り組みが行われています。
【個人レベルでの取り組み】
● レジ袋ではなくエコバッグを使用する
● シャンプーやボディソープは詰め替え用を使用する
● 海・河川・街中でゴミ拾い活動をする
【企業・自治体レベルでの取り組み】
● リサイクル材を使用した商品を開発する
● 自治体で協力してごみを減らすプロジェクトを推進する
● 地域住民と協力してゴミ拾い活動を行う
公式ホームページでは、すぐに取り組めるアクションや、マイクロプラスチックを減らすための取り組みなどが紹介されています。
プラスチック資源循環戦略
プラスチック資源循環戦略とは、海洋プラスチックごみ問題や気候変動などさまざまな問題に対応するために策定された方針です。「3R + Renewable」の基本原則と「2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制」「2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに」「2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入」などからなる6つのマイルストーンを目指すべき方向性として定めています。
プラスチック資源循環戦略の推進により、プラスチックごみ問題の解決に加えて、経済成長や雇用創出などの効果にも期待されています。
海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
海洋プラスチックごみ対策アクションプランとは、環境省が中心に策定した取り組みで、海洋プラスチックごみの削減と資源の有効活用を目指すものです。具体的には、以下の8つのアクションが定められています。
● 廃棄物処理制度等によるプラスチックごみの回収・適正処理の徹底
● ポイ捨て・不法投棄・非意図的な海洋流出の防止
● ポイ捨て・不法投棄されたごみの回収
● 海洋に流出したプラスチックごみの回収
● 代替素材の開発・転換等のイノベーション
● こうした取組を促進するための関係者の連携協働
● 途上国等における対策促進のための国際貢献
● 実態把握・科学的知見の集積
プラスチックオフセット
プラスチックオフセットとは、プラスチックの消費や廃棄による環境負荷をオフセット(相殺)する仕組みです。消費者や企業がプラスチッククレジットを購入する、もしくはプラスチック削減プロジェクトへ資金提供するなどを通して、間接的に排出量削減に貢献できます。カーボンクレジットのプラスチックバージョンだと考えるとイメージしやすいでしょう。
カーボンオフセットのように制度として確立されているわけではありませんが、この制度を活用して環境負荷の低減に取り組んでいる企業もあります。
各国でのプラスチック規制
日本での取り組みを中心に解説しましたが、世界各国でのプラスチック規制は取り組まれています。
● アメリカ:海洋プラスチックごみ削減を目指したSave Our Seas 2.0を策定
● EU:リユース・リサイクルの推進や、循環型経済実現に向けたイノベーションの拡大など
● 中国:一部プラスチック製品の使用規制
● インド:一部使い捨てプラスチック製品の使用規制
● アフリカ諸国:レジ袋を禁止
代替プラスチックの利用
代替プラスチックとして注目されているものには、バイオマスプラスチックと生分解プラスチックの2つがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
バイオマスプラスチック
バイオマスプラスチックとは、バイオマスを原料としたプラスチックです。バイオマスとは生物由来の有機資源のことで、水と二酸化炭素から生物が生成するため、再生可能で枯渇しにくいなどの特徴があります。
バイオマスプラスチックには、以下のような素材が用いられます。
● サトウキビ
● とうもろこし
● バイオポリエチレン
● バイオポリプロピレン
● バイオPET
● 廃食用油
● トール油
プラスチックを燃焼させた際は二酸化炭素が排出されますが、バイオマスプラスチックの場合は、植物の成長過程で二酸化炭素を吸収しているため、二酸化炭素濃度を上昇させません。カーボンニュートラルな材料であり、地球環境に優しいとされています。
生分解性プラスチック
生分解性プラスチックの特徴は、一定の条件下では最終的に水と二酸化炭素レベルまで分解される点です。日常生活で頻繁に使用される使い捨てのプラスチック製品や、農業用シートなどに活用されています。
製造コストがまだまだ高く、分解条件も厳密に決まっているなどの課題は抱えていますが、普及によりプラスチックごみ問題の解決が期待されています。
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