
産業廃棄物は適正に処理されなければ、環境や地域の人々の健康に悪影響を及ぼす可能性がある重要なものです。
そのため産業廃棄物を排出する事業、収集運搬業者、処分業者は適正な処理が求められます。
この際に重要なのがマニフェスト制度です。
本記事では、マニフェスト制度の目的や導入背景などについて解説していきます。
目次
マニフェスト制度とは?

マニフェスト制度とは産業廃棄物を正しく処理するために必要な制度です。
マニフェストは1992年に使用が義務付けられました。当時は、人や環境に被害を及ぼす可能性のある特別管理産業廃棄物がマニフェスト制度の対象でしたが、1998年より全ての産業廃棄物へのマニフェスト使用が義務付けられるようになっています。(※)
※出典:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター).「マニフェスト制度とは(目的)」
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/about/system/purpose/index.html(入手日付2023-02-13).
マニフェスト制度の目的
産業廃棄物を排出している事業者は、収集運搬業者、処分業者に産業廃棄物の処理を委託するのが一般的です。
マニフェスト制度は、委託元である事業者が産業廃棄物をどう処理しているかを把握して、不法投棄などを防ぎ、適正に処理することを目的としています。
そもそもマニフェストとは?
産業廃棄物の処理におけるマニフェスト制度は、産業廃棄物を正しく処理することが目的の制度です。しかし、産業廃棄物以外でもマニフェストという言葉は用いられます。
例えば、輸出入の際に税関に提出する書類もマニフェストとして知られています。
語源は異なるようですが選挙公約としてのマニフェストのほうが有名かもしれません。
一方で産業廃棄物処理におけるマニフェストは、産業廃棄物管理票のことです。
マニフェスト制度導入の背景
マニフェスト制度が導入されるまでは、排出事業者が産業廃棄物をどのように委託先が処分しているかを把握するのが困難でした。
また、排出事業者への責任も分かりづらかったため、不法投棄を防ぐことも難しい状況でした。
このような状況を受けて、マニフェスト制度により排出事業者の責任を明確にし、産業廃棄物を正しく処理することが義務付けられるようになったのです。

マニフェスト作成の対象者
マニフェストを作成する必要があるのは、産業廃棄物の排出事業者です。排出事業者はマニフェストを作成して、委託先が適切に産業廃棄物を処理しているかを確認する必要があります。
ただし、次のようなケースはマニフェストを作成する義務はありません。(※)
● 市区町村、都道府県に産業廃棄物処理を委託する場合
● 廃油の処理を廃油処理事業を行なう港湾管理者もしくは漁港管理者に委託する場合
● 古紙、鉄くずといった再生利用が目的の産業廃棄物(専ら物)の処理業者に専ら物の処理を委託する場合
● 再生利用認定制度や広域認定制度によって環境大臣の認定を受けた業者に認定品目である産業廃棄物処理を委託する場合
● 再生利用に関係する都道府県知事の指定を受けた業者に、指定品目である産業廃棄物の処理を委託する場合
● 運搬用パイプラインやパイプラインに直結する処理施設で産業廃棄物の処理を行なう業者に委託する場合
● 産業廃棄物を輸出するための運搬を行う業者に、日本から相手国までの運搬を委託する場合
● 海洋汚染防止法によって許可を受けた廃油処理事業を行う業者に、外国船舶で発生した廃油の処理を委託する場合
上記のケースで挙げられている専ら物とは、廃棄物の中でも再生利用を目的としている物を指します。専ら物に当てはまるのは次のような物です。
● 古紙
● 金属くず
● 空きビン類
● 古繊維
また再生利用認定制度、広域認定制度における認定品目とは次のような廃棄物です。
● 再生利用認定制度:自動車用の廃ゴムタイヤ、廃プラスチック類、廃肉骨粉、廃木材、金属を含んだ廃棄物、汚泥
● 広域認定制度:通常の運搬方法で腐敗、揮発して生活環境に影響を及ぼさない物、排出事業者もしくは委託先が廃棄物となった製品の構造を理解して適正な処理ができる物
※出典:e-Gov法令検索.「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」.
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=346M50000100035,(入手日付2023-02-13).
マニフェストと産業廃棄物処理の流れ
産業廃棄物処理の流れは、分別と保管、収集と運搬(積替)、中間処理、再生処理と最終処分の工程に分けられます。各工程の担当は、次の通りです。
● 排出事業者:分別と保管
● 収集運搬業者:収集と運搬(積替)
● 処理業者:中間処理、再生処理と最終処分
そして、マニフェストは各工程に応じて用いられます。
マニフェストには、直行用マニフェストと積替保管用マニフェストの2種類があります。直行用マニフェストは積替保管施設を経由しない場合に用いられるもので、7枚複写です。
一方で、積替保管施設を経由する積替保管用マニフェストは、8枚複写になっています。
また、排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する際に発行するマニフェストを1次マニフェスト、委託先業者が処分で残った物(残さ物)の処分を最終処分業者に委託する際のマニフェストを2次マニフェストと呼びます。
直行用マニフェスト
7枚複写の直行用マニフェストの内訳は、A票、B1票、B2票、C1票、C2票、D票、E票です。それぞれ次のような役割を果たしています。
排出事業者はA票に処分を委託する産業廃棄物の種類や量、運搬を委託する業者の情報、収集運搬先、処分の委託先などを記入する流れです。
直行用マニフェストは排出事業者、収集運搬業者、処理業者で取り扱うマニフェストが異なります。具体的には次の通りです。(※)
事業者 | マニフェストの種類 | マニフェストの役割 |
---|---|---|
排出事業者 | A票 | 必要事項を記入して収集運搬業者がサインした後に保管する |
B2票 | 収集運搬業者の運搬が完了したら届く | |
D票 | 処理業者の処分が完了したら届く | |
E票 | 最終処分が完了したら届く | |
収集運搬業者 | B1票 | 運搬が終了したら終了年月日を記載してB2票を排出事業者に提出。B1票は控え |
C2票 | 処理業者の処分が完了したら届く | |
処理業者 | C1票 | 処理が終了したら終了年月日を記載してD票を排出事業者に、C2票を収集運搬業者に提出。C1票は控え |
※出典:基本的なマニフェストの流れ(直行用の場合).
http://www.banriki.com/file/manifesto_2.pdf,(入手日付2023-02-13).
積替保管用マニフェスト
積替・保管作業が行われる場合は、積替保管用マニフェストを用います。
積替・保管作業とは、産業廃棄物を別の車両に積み替えることや、ある程度の量まで保管してから運搬することです。
積替や保管作業中には産業廃棄物が飛散したり流出したりしないような工夫を講じることが求められています。
積替保管用マニフェストの内訳は、A票、B2票、B4票、B6票、C1票、C2票、D票、E票の8枚です。
積替保管用マニフェストは次の通りで、業者ごとに取り扱うマニフェストが異なります。(※)
事業者 | マニフェストの種類 | マニフェストの役割 |
---|---|---|
排出事業者 | A票 | 必要事項を記入して収集運搬業者がサインした後に保管する |
B2票 | 収集運搬業者が第1区間の運搬を完了したら届く | |
B4票 | 収集運搬業者が第2区間の運搬を完了したら届く | |
B6票 | 収集運搬業者が第3区間の運搬を完了したら届く | |
D票 | 処理業者の処分が完了したら届く | |
E票 | 最終処分が完了したら届く | |
第1区間収集運搬業者 | B2票のコピー | 排出事業者に提出したB2票のコピー |
第2区間収集運搬業者 | B4票のコピー | 排出事業者に提出したB4票のコピー |
第3区間収集運搬業者 | B6票のコピー | 排出事業者に提出したB6票のコピー |
C2票 | 処理業者の処分が完了したら届く | |
処理業者 | C1票 | 処理が終了したら終了年月日を記載してD票を排出事業者に、C2票を収集運搬業者に提出。C1票は控え |
積替保管用マニフェストでは、収集運搬業者は第1区間から第3区間に分かれていて、処理業者の処分が完了したら届くC2票は第3区間の収集運搬業者が受け取ります。
※出典:群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課「産業廃棄物管理票(マニフェスト伝票)の伝票ごとの流れ」.
https://www.pref.gunma.jp/site/sanpai/131412.html,(入手日付2023-02-13).
マニフェストの形式
マニフェストの形式は、紙マニフェストと電子マニフェストの2種類です。
紙マニフェストは前述した通り直行用マニフェストであれば7枚、積替保管用マニフェストであれば8枚の伝票を管理しなければなりません。
一方、電子マニフェストは公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が運営するシステム「JWNET」を通じて、排出事業者、収集運搬業者、処分業者同士の情報共有が可能です。
例えば収集運搬業者、処分業者はそれぞれの業務が終了したら、JWNETで報告。排出事業者はJWNETを通じて運搬業務、処分業務が完了したことを確認できます。
電子マニフェストが注目されている理由
JWセンターの発表によれば、マニフェストの電子化率は次の通り年々上昇しています。(※)
年度 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
電子化率 | 39% | 42% | 47% | 53% | 58% | 63% | 65% | 72% |
このようにマニフェストの電子化率が向上している理由として、電子マニフェストならではの特長が関係しています。
電子マニフェストは紙マニフェストと異なり、マニフェスト伝票の交付の状況を都道府県知事などに報告する必要がありません。
紙マニフェストは排出事業者が年に1回、前年度の4月1日から3月31日までの期間のマニフェスト伝票交付についての状況を都道府県知事などに報告しなければなりません。
一方で、電子マニフェストはJWセンターが排出事業者に代わって自動で1年間のマニフェストデータを都道府県知事などに報告してくれます。
また、紙マニフェストは伝票を5年間保存する義務がありますが、電子マニフェストであれば情報処理センターであるJWセンターにデータが保存されるため、事業者が伝票を保存する必要がなく手間がかかりません。
※出典:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター).「登録件数・電子化率」.
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/about/regist/index.html,(入手日付2023-02-13).
法令を遵守した運用が可能
電子マニフェストはJWNETを通じて、排出事業者、収集運搬業者、処分業者がデータを閲覧できます。
そのためデータの書き換えといったような不正の発生を防止して、法令を遵守したマニフェストの運用が可能です。
紛失リスクを減らせる
マニフェストに限らず、紙の書類は紛失リスクがつきものです。管理を徹底していないと紙マニフェストを紛失してしまう恐れがあります。
その点電子マニフェストであれば、電子データで管理できるため紛失のリスクを減らせます。
業務の効率化
紙マニフェストは伝票への記入や業者間の伝票の受け渡し、報告などの事務作業が発生します。特にマニフェストの量が多い業者にとっては、事務作業の負担が増してしまうでしょう。
このような状況に対して電子マニフェストを導入することで、伝票への記入や受け渡しなどで発生していた事務作業の手間が省けます。これによって、業務の効率化や人件費の削減にもつながります。
電子マニフェストのデメリット
電子マニフェストは、マニフェスト交付状況の報告や伝票の保存義務がないなどのメリットがある一方で、JWNETの利用に費用がかかる、関係する業者全てがJWNETに加入しなければならないといったデメリットがあります。
排出事業者は最大26,400円の基本料が発生する
JWNETの利用にかかる費用は、排出事業者、収集運搬業者、処分業者ごとで異なります。
例えば、排出事業者であればA~Cの3つの利用区分に応じた料金から選択可能です。(※)
A料金 | B料金 | C料金 (団体加入料金) |
|
---|---|---|---|
基本料(税込) | 26,400円 | 1,980円 | 110円 |
使用料(税込) | 11円 | 91件から22円 (90件までは無料) |
6件から22円 (5件までは無料) |
一方、収集運搬業者は年間13,200円の基本料金のみ発生します。処分業者も処分報告のみを行なうのであれば、年間13,200円の基本料金が必要です。
ただし、2次マニフェストを登録する場合は、次の費用がかかります。(※)
A料金 | B料金 | |
---|---|---|
基本料(税込) | 26,400円 | 13,200円 |
使用料(税込) | 11円 | 91件から22円 (90件までは無料) |
※出典:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター).「利用料金」.
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/youshiki/payment/fee/index.html,(入手日付2023-02-13).
関係する業者全てがJWNETに加入する必要がある
電子マニフェストを運用するためには、排出事業者、収集運搬業者、処分業者全ての業者がJWNETに加入している必要があります。
前述の通り加入には各業者で費用がかかるため、電子化までに時間がかかってしまう可能性もあるのです。
電子マニフェストを活用して業務の効率化を図ろう
産業廃棄物の排出事業者は、委託先である収集運搬業者、処分業者が正しく産業廃棄物を処理しているかを把握する必要があります。
その際に必要になるのがマニフェスト制度です。マニフェスト制度には紙マニフェストと電子マニフェストの2つの形式があり、電子マニフェストであれば、マニフェスト伝票交付についての状況や伝票の5年間保存という義務はありません。
電子マニフェストを導入する際は、「DXE Station」の活用がおすすめです。
同サービスは電子マニフェストの代行起票やクラウドでのマニフェスト一元管理が行えます。排出事業者、収集運搬業者、処分業者それぞれの業務効率化をサポートします。

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