
病院や診療所などの医療関係機関が、医療廃棄物の処理を委託する場合、許可を受けた廃棄物処理業者(収集運搬業者・処分業者)に依頼する必要があります。
許可のない処理業者に委託するのは法律違反です。
また委託した業者が不適正な処理をした場合、委託した医療関係機関も「排出事業者責任」という責任が課せられ、法的措置の対象となるため注意してください。
本記事では医療廃棄物の処理を委託する場合に、安心して任せられる業者を選ぶためのポイントを解説します。
委託の流れやリスクについても紹介するので、医療関係機関の方は参考にしてみてください。
目次
医療廃棄物処理業者の選び方は?大事なポイント9つ
医療関係機関が処理を委託する場合、廃棄物の最終処分が終わるまで適正に処理されているか責任を持って管理する必要があります(※)。
もし、委託した処理業者に不法投棄などの不適正な行為があった場合、依頼した医療関係機関にも罰則が科されるため、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
では、どのようにして処理業者を選べばよいのでしょうか。
ここではチェックしておきたい9つのポイントを紹介します。
参考:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第三条)」(入手日付2024-01-06)
許可証を取得している
医療関係機関が廃棄物の処理を委託する場合は、都道府県・政令市が発行した許可証を所持している処理業者を選ばなければなりません(※)。
許可証は申請手続きを行い、厳正な審査に通過しないと取得できません。審査をクリアするには以下の要件を全て満たすことが必要です。
● 講習会を修了している
● 運搬施設が整っている
● 事業計画が策定されている
● 経理的基礎(経済力)がある
● 欠格要件に該当していない
また、感染の恐れがある特別管理産業廃棄物(感染性廃棄物)の処理を委託するには、特別管理産業廃棄物を取り扱うための許可証を所持する処理業者を選ぶ必要があります(※)。
参考:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第十二条の二)」 (入手日付2024-01-06)
※参考:環境省. 「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」(入手日付2024-01-09)
希望条件に合っている
医療廃棄物の処理体制・管理体制は医療関係機関によって異なります。そのため廃棄物処理業者を選ぶ際は、それぞれの医療関係機関が希望する条件に合ったところを選ぶことが大切です。
収集運搬業者が希望する回収頻度、回収時間、回収日などに対応できるかどうかもチェックしておきましょう。
優良認定を受けている
環境省が設けている「優良産廃処理業者認定制度」で優良認定を受けているかどうかもチェックしておくとよいでしょう。
優良産廃処理業者認定制度は通常の許可基準に比べて、厳しい基準に適合した優良な処理業者を都道府県・政令市が審査して認定するものです(※)。
処理業者が優良認定を受けるには、以下の基準に適合しなければなりません。
● 遵法性
● 事業の透明性
● 環境配慮の取組
● 電子マニフェスト
● 財務体質の健全性
優良認定のある処理業者は、公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団が提供している検索サービス「さんぱいくん・優良認定業者検索」で探せます。
※参考:環境省. 「優良産廃処理業者認定制度」 (入手日付2024-01-06)
作業の手順を明確に示している
医療廃棄物処理の処理を委託した業者が、どのような手順で処理しているか、委託する側も知っておく必要があります。業者の処理フローを把握していない場合、不適正な処理があってもチェックできません。処理全体の流れを明確に説明できる業者を選ぶことも大切なポイントです。
処理施設を実際に視察して、適正な処理がなされているかどうかも確認してみましょう。設備の稼働状況や廃棄物の保管状況などは、現場に足を運ばないと確かめられません。
現場に足を運んでみて「処理現場が散らかっている」「収集運搬車の表示がないトラックが頻繁に出入りしている」などの場合は、他の業者に委託する方が安心です。
過去の実績をチェックする
過去の実績もチェックしておきたいポイントです。
医療廃棄物の処理には厳しい基準が設けられています。そのような中で長く事業を続けて実績を積み重ねており、顧客と継続的な契約を交わしている処理業者は信頼性が高いと判断できます。
また実際にその業者を利用している医療関係機関や、関連業者などの評判を参考にするのもよいでしょう。
収集運搬車両の台数や種類が多い
収集運搬車両の台数を確かめるのも、処理業者を選ぶポイントの一つです。
収集運搬車両が多い場合、業者の収集能力が高いと判断できます。特に廃棄量が多い医療関係機関は、収集運搬車両を多く保有する業者がおすすめです。
保有している車両の種類にも注目してください。種類が多いほど、さまざまな医療廃棄物を取り扱える可能性が高くなるためです。また医療廃棄物以外に様々な廃棄物の処理を依頼できる点もメリットといえるでしょう。
複数の業者に見積もりを依頼する
料金設定が適正かどうかも処理業者を判断する大切なポイントです。適正な料金設定かどうか分からない場合は、複数社から見積もりを取って料金を比べてみましょう。おおまかな相場が分かるはずです。
ただし、価格の安さだけで決めてしまうのはリスクがあります。
医療廃棄物の適正な処理にはある程度のコストが掛かるのが一般的です。他と比べて極端に料金の低い業者の中には、悪質な業者が混ざっている可能性も否定できません。
料金の安さだけで安易に決めるのではなく、法や規則を遵守してきちんと処理を行っている業者を選びましょう。
財務諸表を確認する
許可証を申請する際の条件に「経理的基礎があること」が挙げられているように、会社の財政力も大切なポイントです。また、処理業者が優良認定を受ける際も「財務体質の健全性」が条件とされています。
これらは財政状況の苦しい処理業者が、倒産して廃棄物を放置しないようにするためです。候補の中でも経理的基礎があり、財務体質の健全な業者を選ぶのがおすすめです。
業者の経理的基礎や財務体質の健全性は、公表されている財務諸表で確認できます。財務諸表で経営状態を知るには、環境省が優良認定のため定めた以下のような項目をチェックするとよいでしょう。
● 直前3年の各事業年度のうちいずれかの事業年度の自己資本比率が10%以上
● 直前3年の各事業年度の経常利益金額などが平均値で零を超える(黒字である)
● 産業廃棄物処理業の実施に関連のある税、社会保険料などを滞納していない
● 特定産業廃棄物最終処分場について積み立てるべき維持管理積立金の積立てをしている
※参考:環境省. 「優良産廃処理業者認定制度運用マニュアル」(入手日付2024-01-06)
過去に行政処分を受けている業者には委託しない
処理業者を選ぶ際は、過去に行政処分を受けていないかもチェックしましょう。行政処分には改善命令・措置命令・事業の停止・許可の取り消しなどがあり、重大な過失や違反があった場合に処分が下されます。
過去の行政処分の有無については公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団が提供している「産業廃棄物処理業・処理施設許可取消処分情報」で調べられます。

不適切な医療廃棄物処理業者の選定が招くリスク2つ
前述したように医療関係機関が廃棄物の処理を委託した業者が、不適正な処理を行った場合は医療関係機関の責任も問われます。それだけでなく次のようなリスクもあることを知っておきましょう。
イメージが低下する
委託した業者が不適正な処理を行うと、処理業者だけでなく排出事業者である委託した医療関係機関の名前が公表される場合もあります。
特に人に感染する恐れのある特別管理産業廃棄物の不法投棄などが発覚すると社会問題となり、医療関係機関の名前が広く報道される可能性もあるでしょう。
そうなると医療関係機関としての社会的評価が大きく損なわれます。社会的な信用を失うと経営にも悪影響を及ぼしかねません。
法的罰則を受ける
廃棄物処理法に違反すると、懲役や罰金などの罰則が科されます。廃棄物処理法に規定されている罰則のほとんどに、両罰規定が適用される点にも注意が必要です。
両罰規定とは個人が違法な行為をした場合も、個人だけでなく所属する法人も併せて罰せられる規定のことです。
例えば従業員が許可を得ていない処理業者に委託した場合、医療関係機関も処罰の対象となることを意味します。
処理委託した医療機関が責任を問われるケースと、具体的な刑罰を紹介しましょう。
● 無許可業者に産業廃棄物処理を委託した(廃棄物処理法二十五条違反)
⇒5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金またはこれらの併科
● 処理委託契約書を締結しないで委託した(廃棄物処理法二十六条違反)
⇒3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科
● マニフェストを交付せず産業廃棄物を引き渡した(廃棄物処理法二十七条の二違反)
⇒1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金
参考:日本医師会. 「業者に処理委託した医療機関が、責任を問われるとき」(入手日付2024-01-06)
参考:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第二十五条・二十六条・二十七条の二)」(入手日付2024-01-06)
医療廃棄物の処理を業者に委託する流れ
医療廃棄物を処理業者に委託する流れは、以下のようになります。
委託する業者を選ぶ
まず委託する収集運搬業者や処分業者を選びます。その際、収集運搬業者や処分業者が都道府県または政令市の発行した許可証を所持していることを確認しなければなりません。
医療関係機関が感染の恐れがある特別管理産業廃棄物(感染性廃棄物)の処理を委託する際には、特別管理産業廃棄物を取り扱うための許可証を所持する処理業者を選んでください(※)。
※参考:環境省. 「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」 (入手日付2024-01-09)
委託契約書の締結
次に選定した処理業者と産業廃棄物処理委託契約書を締結します。なお、収集運搬業者と処分業者が異なる場合、それぞれと二者間で直接書面にて委託契約書を取り交わさなければなりません(※)。
※出典:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第十二条の五)」 (入手日付2024-01-06)
マニフェストの交付・保管
医療廃棄物の処理を委託する際、処理業者へマニフェストの交付が義務付けられています(※)。
マニフェストとは委託した産業廃棄物が契約どおりに適正処理されたかを確認するための管理伝票です。
マニフェストは、処理業者に産業廃棄物を引き渡すと同時に交付しなければなりません。また医療関係機関は、委託した処理業者から送付されるマニフェストを5年間保管する義務があります。
医療廃棄物処理業者に関するよくある質問2つ
最後に医療廃棄物処理に関して、よく寄せられる質問に回答しましょう。
医療廃棄物の種類は何がある?
医療廃棄物の種類を大別すると「医療関係機関等」で排出されるものと「家庭」で排出されるものの2つがあります。
医療廃棄物はさらに「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の2種類に分類され、感染のリスクによって「感染性廃棄物」と「非感染性廃棄物」に分けられます。
医療廃棄物と感染性廃棄物の違いは?
医療廃棄物とは医療行為などに伴って生じた廃棄物全般のことです。中でも人に感染するものや感染の恐れのある廃棄物を感染性廃棄物といいます。感染性廃棄物は特別管理産業廃棄物として扱わなければなりません。
具体的には「血液・血清・血しょう・体液」「臓器や皮膚などの病理廃棄物」「病原微生物に関する試験や検査で用いた器具」「血液の付いたメスや破損したガラスくずなどの鋭利なもの」などが感染性廃棄物に該当します。
※参考:環境省. 「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」(入手日付2024-01-09)
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