産業廃棄物の鉱さいとは?種類や処分方法について解説

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鉱さいは、金属の精錬過程で発生する副産物であり、産業廃棄物に分類されます。中には有害物質を含むものもあるので、法律に基づき適切な処理を施さなければなりません。そのためには、鉱さいの種類や発生する現場、処分方法などを明確に理解しておく必要があります。

そこで本記事では、産業廃棄物の鉱さいの概要や種類、発生する現場、分類などを詳しく解説します。記事後半では、処分方法や処分する際の問題点なども併せてご紹介するので、事業活動に伴い鉱さいが排出される事業場に携わる方はぜひ参考にしてください。

鉱さいとは?

鉱さいとは、鉄・ニッケル・クロムの精錬過程で発生する副産物や不純物の総称です。高温炉や電気炉内で発生する炉かすの一種なので、スラグ(slag)とも呼ばれます。

鉱さいは産業廃棄物に分類されるため、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)の規定に基づき、処理基準や流れが厳格に定められています。事業活動に伴い鉱さいが排出される場合は、土壌汚染や水質汚染、環境への負荷、人体への悪影響を最小限に抑えるためにも確実に遵守しましょう。

実際、有害物質が含まれた鉱さいに起因した「日本化学工業六価クロム事件」などの公害も過去に発生しています。この事件は、発がん性物質であり消化器系にも悪影響がある六価クロムを含む鉱さいを、適切に処理せず投棄していたものです。地下から大量に見つかり、健康被害が問題視され、集団訴訟にまで発展しました。

なお環境省が毎年発表している「産業廃棄物の排出及び処理状況等」の令和2年度版によると、令和2年度の国内における鉱さいの排出量は1,077.8万トンです。これは産業廃棄物全体の排出量37,381.8万トンの2.9%に当たります。

参考:環境省「産業廃棄物の排出・処理状況等(令和2年度実績)」(入手日付2024-02-11)


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鉱さいの種類

一口に鉱さいといっても、金属製造工程起源スラグと廃棄物加熱溶融起源スラグに分類されます。鉱さいとは本来、金属製造工程起源のものなので、それについて詳しく見ていきましょう。

金属製造工程起源スラグは「鋼鉄スラグ」と「非鉄金属スラグ」に分類されます。それぞれの成分や代表例などをご紹介します。

鉄鋼スラグ

鋼鉄スラグとは、鉄鋼の製造過程で生じる金属製造スラグで高炉スラグと製鋼スラグに大別できます。

高炉スラグとは高炉で製鉄する過程で生じる物質で、鉄鉱石に含まれる鉄以外の余分な成分と、石灰石やコークスなどの副原料が混ざったものです。高炉スラグは、冷却方法によってさらに細かく、高炉水砕スラグと高炉徐冷スラグに分けられます。

製鋼スラグとは、鋼を製造する過程で生じる副産物です。転炉由来の転炉系スラグと、電気炉由来の電気炉系スラグに分類されます。

非鉄金属スラグ

非鉄金属スラグとは、ニッケル・亜鉛・銅などの非鉄金属の精錬過程で生成される銅スラグやフェロニッケルスラグ、亜鉛スラグなどです。こうした非鉄金属の精錬には乾式製錬と湿式精錬があり、主に乾式精錬で得られる非鉄金属スラグが、土木資材としてコンクリート用骨材や舗装用材、盛土などに用いられています。

非鉄金属スラグは、精錬した非鉄金属の2倍以上排出されます。そのため、非鉄金属スラグをいかに有効活用するかは重要な課題です。

参考:一般社団法人日本建設機械施工協会「建設資材としての非鉄スラグ」(入手日付2024-02-11)

鉱さいが発生する現場

鉱さいは主に、製鉄工程や鋳物製造の工程で発生します。そのため、自ずと製鉄業界や鉄鋼業界ではさまざまな種類の鉱さいが排出されます。非鉄金属製造業で排出される鉱さいは、銅スラグや亜鉛スラグなどです。

また輸送用機械器具製造業や窯業、ゴム製造業などからも、鋳物廃砂や溶解カスとして排出されます。その他、ごみの焼却や汚泥処理でも鉱さいが発生し、これらは廃棄物加熱溶融起源スラグと呼ばれます。

廃棄物としての鉱さいの分類

鉱さいが産業廃棄物に分類されることは先述の通りですが、場合によっては特別管理産業廃棄物となるケースもあります。特別管理産業廃棄物とは、爆発性・毒性・感染性が高く特に人体や環境に悪影響を及ぼす可能性のある産業廃棄物の総称です。

特別管理産業廃棄物は一般的な産業廃棄物と比較して、さらに厳しい処理基準が定められており、特別管理産業廃棄物の収集運搬・処分に関わる許可が必要です。

一定の基準値以上の重金属類を含む鉱さいは、特別管理産業廃棄物に分類されます。以下が該当する物質とその検出基準です。

  • アルキル水銀化合物:検出されないこと
  • 水銀またはその化合物:0.005mg/L未満
  • カドミウムまたはその化合物:0.09mg/L未満
  • 鉛・ヒ素・セレンまたはその化合物:0.3mg/L未満
  • 六価クロム化合物:1.5mg/L未満

上記の物質が基準値以上で排出される事業場を運営している場合は、特別管理産業廃棄物管理責任者の設置義務があります。特別管理産業廃棄物管理責任者の資格要件や取得の流れなどは、こちらの記事で解説しているので、併せて参考にしてください。

参考:環境省「特別管理産業廃棄物の判定基準(廃棄物処理法施行規則第1条の2)」(入手日付2024-02-11)

鉱さいの処分方法

鉱さいの処分方法は大きく分けて「管理型最終処分場で処理する」「リサイクルする」の2つです。それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。

管理型最終処分場で処理する

鉱さいは、管理型最終処分場で処理されます。

管理型最終処分場とは、有害物質の検出基準に適合した鉱さいやばいじん、汚泥、木くず、紙くず、動植物性残さ、動物のふん尿などが埋立処分される処分場です。埋め立てられた廃棄物の浸出液が地下水や土壌に浸透しないように遮水設備、浸出液を集める集水設備、発生したガスを除去するためのシステムなどが備えられています。

なお有害物質が基準値以上検出される鉱さいは、遮断型処分場で処理されます。

リサイクルする

鉱さいは数ある産業廃棄物の中でも、リサイクルが進んでいる品目だと言えます。「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度実績)」によると、鉱さいの91.9%が再利用されており、これはがれき類(96.4%)・金属くず(95.8%)・動物のふん尿(95.0%)に次ぐ水準です。鉱さいは具体的に、以下の手法や用途でリサイクルされています。

  • 鋳物砂(いものずな)
  • セメントの原料
  • 路盤材
  • 肥料
  • 磯焼け対策

それぞれの方法を詳しくご紹介します。

参考:環境省「産業廃棄物の排出・処理状況等(令和2年度実績)」(入手日付2024-02-11)

鋳物砂

鋳物砂(いものずな)とは、金属の鋳造過程で型を取るために使用される砂です。一般にはシリカサンド(珪砂)や人口砂、ジルコン砂などが用いられます。

鉱さいは、磁力で鉄を除けば鋳物砂としてリサイクルできます。産業廃棄物の排出量を減らしながら、それを再び工業製品の製造過程の一連の流れに組み込むことが可能です。

セメントの原料

鉱さいは、セメントの原料として再利用することも可能です。

一般にセメント製造の原料には、粘土や珪石などの天然素材が用いられます。銅スラグや亜鉛スラグなどには酸化鉄と二酸化ケイ素が多く含まれており、セメントの代替材料となり得ます。

路盤材

路盤材とは、道路や鉄道の路上などの基礎部分に敷かれる材料です。路盤材はアスファルトやコンクリートなどの下に配置され、地盤を強化し安定化させる役割を担います。路盤材には一般的に、砂利や再生骨材、砕石などが用いられます。

鉱さいはこうした材料と性質が似ており、強度もあるため路盤材としても利用可能です。

肥料

高炉スラグと製鋼スラグなどの鉱さいは、肥料としてリサイクルできます。

高炉スラグには、CaO(酸化カルシウム)・SiO2(二酸化ケイ素)・MgO(酸化マグネシウム)が含まれており、鉱さいけい酸質肥料(ケイカル肥料)として稲作などに使用可能です。優れた耐性を持つ稲作り、乾物生産、品質・味の向上などに役立ちます。

製鋼スラグには上記の主要な3成分に加えて、FeO(酸化鉄)・MnO(酸化マンガン)・P2O5(五酸化二リン)などが含まれています。稲作以外にも、畑作や牧草の肥料としてリサイクル可能です。

またアルカリ性の鉱さいは、酸性土壌を中性化する効果にも期待できます。

磯焼け対策 

磯焼けとは、浅瀬の岩礁や転石域にて、海藻が季節的変化や経年変化以上に消耗する現象です。磯焼けにより微生物が減少し栄養状態が悪くなることで、結果的にサザエやアワビなどの漁獲業に大きな影響を与えます。磯焼けの原因にはさまざまなものが考えられますが、主に海水温度の上昇や汚染物質の海洋放出などです。

日本のみならず世界的に問題視されている磯焼けの対策に、鉱さいが役立ちます。鉱さいには、鉄分が多く含まれているためです。鉄分を多く含んだ鉱さいを海水に放流することで、海藻の生育に必要な栄養素を供給できます。

北海道で行われた実証実験では、製鉄スラグに腐葉土を混ぜた施肥ユニットを海中に設置したところ、海藻が再生しました。

鉱さいを磯焼け対策に使用する場合は、環境中に放流するため、より一層有害物質が含まれていないか留意する必要がありますが、一定の効果は得られているようです。

鉱さいを処分する際の問題点

鉱さいを処分する際、「全てをリサイクルするのは難しい」「有害物質が多く含まれている」などが問題となる場合があります。それぞれの問題を詳しく見ていきましょう。

全てリサイクルするのは難しい

鉱さいは産業廃棄物の中でも、リサイクル率が高いことは先述しました。実際、日本産業規格(JIS)化され、コンクリートや舗装材料、港湾材料などとして利用されています。

しかし、全ての鉱さいをリサイクルできるわけではありません。品質を確保することや、長期的な安全性や強度を確保することが難しいためです。高品質の材料にするには細かく粒度の調整を行ったり、不純物を取り除いたりする追加の加工が必要となるため、コストがかさみます。

参考:環境省「産業廃棄物の排出・処理状況等(令和2年度実績)」(入手日付2024-02-11)

有害物質が多く含まれている

鉱さいには、水銀やカドミウム、ヒ素を始めとする有害物質が多く含まれている点が問題です。こうした有害物質が海水や土壌に流出すると、汚染や健康被害の原因となります。

もちろん、有害物質が含まれているかは試験を行い、基準値未満であることを確かめた上でリサイクルや再利用処理が施されます。しかし、コンクリートや舗装材料などの建築資材とした場合、長期間紫外線や雨、風にさらされることになるため、何らかの化学反応により長期的に健康被害や環境汚染が引き起こされる可能性も否定できません。

再利用率が高くインフラ整備にも使われる有能な産業廃棄物ですが、同時に重大なリスクを含む物質ともいえるでしょう。

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