
産業廃棄物を処理(収集運搬および処分)するためには、産業廃棄物処理業の許可が必要になります。
排出事業者が自ら処理する場合については不要ですが、この他にもいくつかの例外として、産業廃棄物処理業の許可が不要となるケースが存在します。
中でも「広域認定制度」については、サーキュラーエコノミー(循環経済)にむけた有効な制度だと考えられます。
また、2022年4月に施行された「プラスチック資源循環法」にも「自主回収・再資源化事業計画認定制度」が規定されています。
それでは詳細について確認して行きましょう。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ
目次
産業廃棄物処理業許可の特例

専ら物 (法 第14条) |
専ら再生利用(リサイクル)を目的とする者に対する配慮 古紙、くず鉄、空き瓶類、古繊維の4品目(専業である必要はない) |
---|---|
再生利用認定制度 (法 第15条の4の2) |
生活環境の保全上支障なく再生利用できる者が、環境大臣から認定を受けることができる制度 ゴムタイヤ、建設無機汚泥、廃プラスチック類、金属含有物等 |
広域認定制度 (法 第15条の4の3) |
「拡大生産者責任」の考え方から、製造業者等が主導となってその製品の処理を広域的に行う制度 |
無害化処理認定制度 (法 第15条の4の4) |
有害性のある廃棄物を処理する際に適用される制度 溶融など、高度な技術を有する者が、環境大臣から認定を受けることができる 石綿を含む廃棄物、PCB廃棄物の中でも低濃度のもの |
自主回収・再資源化事業計画認定制度 (プラスチック資源循環促進法) |
プラスチック使用製品の製造・販売事業者等が、自治体や消費者と協力して積極的に自主回収・再資源化事業を行う制度 使用済プラスチック使用製品等(端材なども含む) |
2023年6月16日現在、産業廃棄物広域認定制度の認定状況として206件掲載されています。
環境省:産業廃棄物広域認定制度の認定状況
2023年4月、プラスチック資源循環促進法に基づく事業者の再資源化に係る初めての認定が行われました。
経済産業省:ニュースリリース

広域認定制度と自主回収・再資源化事業計画認定制度
共に製造事業者等が行う使用済み製品廃棄物の回収・リサイクル業務に関して、国の認定を受けることで廃棄物処理法に基づく業の許可を不要とする制度です。その違いを整理してみると下表のようになります。
広域認定制度 | 自主回収・再資源化事業計画認定制度 | |
---|---|---|
目的 | 廃棄物の減量その他適正な処理が確保 | プラスチック使用製品廃棄物の回収・リサイクルの拡大 |
対象品目 | 産業廃棄物の場合、腐敗や揮発などにより生活環境に影響を与えないもの | プラスチック使用製品等 |
処理基準 | 再生もしくは熱回収を行った後に埋立処分 | 再資源化、熱回収のみとする計画は不可 |
マニフェスト | 不要 | 必要(産業廃棄物の場合) |
広域認定制度ではマニフェストの適用が除外されているのに対して、自主回収・再資源化事業計画認定制度では除外されていません。
その他の委託基準は両制度とも適用されますので、産業廃棄物であれば委託基準に沿った契約の締結が必要です。
施設設置許可や行政報告についても免除されておらず対象となります。

また、広域認定制度ではマニフェストの適用が除外されていますが、認定業者に要求される処理工程の管理は、次の環境省令の規定を根拠にマニフェスト同等のレベルであると理解されています。
・施行規則第12条の12の10第3号:「一連の処理の行程を申請者が統括して管理する体制が整備されていること」
マニフェストの適用が除外されていてもマニフェストの利用を禁じるものではありません。広域認定制度に関する電子マニフェスト制度での対応としては、認定業者を「報告不要業者」として設定し、認定業者の運搬、処分の終了報告を不要とする運用が用意されています。実際に広域認定制度で電子マニフェストを利用しているケースは少なくありません。
JWNET:広域認定制度や一般廃棄物等における運用
広域認定制度における処理の委託

産業廃棄物である対象物の処理を委託する場合、以下の2つの方法があります。
(1)認定証に記載された業者に委託する
(2)認定を受けた事業者の承諾を得て、排出事業者が許可を有する業者に委託する
後者の場合は廃棄物処理法に則って処理を委託することになるため、広域認定制度の対象物であってもマニフェストが必要になります。それでは前者について一般的な手続や注意点について記載します。
処理委託契約
広域認定を受けた処理会社へ産業廃棄物の処理を委託する場合、認定を受けた認定事業者との間で処理委託契約書を締結する必要があります。したがって、運搬会社や中間処理会社と契約することはまずありません。
処理委託契約書は認定事業者側でひな形を用意しているケースがほとんどです。なお、処理委託契約書には処理業の許可証の写しの代わりに広域認定の認定証の写しを添付する必要があります。
認定証を確認してみると「認定の年月日」「認定番号」「産業廃棄物の種類」「処理を行う区域」が1ページ目に記載され、続いて「認定を受けた者及びその委託を受けて当該認定係る処理を行う者」の名称・住所等が一覧表で記載されているのが一般的です。
管理票
産業廃棄物であってもマニフェストの交付は免除されますが、認定事業者は処理状況を把握する仕組みが求められているため、いわゆる一般的なマニフェストであるかどうかは別として、送付伝票のような管理票を提示されることがほとんどです。
処理の状況については、マニフェストのように運搬終了時、処分終了時、最終処分終了時に返送による報告があるとは限りません。資産除去時の廃棄証明が必要な場合はあらかじめ相談しておきましょう。
約款付管理票
認定事業者によっては、管理票に約款を記載している場合があります。これは、いわゆる一般的な契約書を締結するのではなく、管理票自体が契約書を兼ねているというものです。約款にはホームページを参照している場合がありますので、約款付管理票だけでは産業廃棄物の処理委託契約書に求められる法定記載事項を満たしていない場合があります。認定証の写しを含めて、必要事項を印刷して書面として合わせて保管しましょう。
日本建設業連合会のホームページには、広域認定制度のページがあり、制度の内容とともに建材製品に関するメーカーごとの連絡先や手続きなどがまとめられています。
日本建設業連合会:広域認定制度
認定事業者のメリット

製造事業者等が主導して製品の処理を行う広域認定制度は、排出事業者が安心して委託できるだけでなく、広域認定を受けた製造事業者等にとってもメリットがあります。
競合他社への優位性につながる
廃棄処分の手間を軽減したいと考えている顧客にとって大きな魅力である。
機能回復して再販売できる
機能低下した製品を回収した後、機能を回復・修復すれば低コストで製品を再販売することができる。
不適正処理に巻き込まれるリスクが減る
自社で製品を回収することになるため、不適正処理に巻き込まれるリスクを抑えることができる。
製品設計の改善ができる
再生または処理が容易な製品設計とすることにつながり、環境にやさしい製品へと改善することができる。
広域認定制度の手続き

広域認定制度の手続きは、大きく分けて4つのステップに分かれます。
照会・相談
広域認定制度の申請希望者は、具体的な申請手続きに入る前に、最寄りの環境省地方環境事務所に相談し、構想などが制度に適しているかどうかを判断してもらわなければなりません。
事前確認
地方環境事務所で問題ないと判断されれば、次はより具体的な処理の構想や体制を作り、申請書類を作成します。そして、それを「環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課(産業廃棄物)」・「環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課(一般廃棄物)」で見てもらい、事前確認を受けます。
審査
事前確認が終われば、申請書類を環境省の担当窓口に提出します。書類に不備がなければ、そのまま審査が開始されます。ちなみに、審査では必要に応じて現地調査が行われる場合もあるので覚えておきましょう。
処理・認定
申請書類を提出後、3ヶ月程度で処理が完了し、問題なければそのまま認定となります。審査の進捗等の連絡はないため、少々長い目で見ながら待つようにしましょう。
環境省環境再生・資源循環局:広域認定制度申請の手引き
最後に
「産業廃棄物処理業許可の特例」および「広域認定制度の詳細」について確認してきました。
広域認定制度は、信頼できる処理業者との関係を構築した上で、「適用を除外されているとはいえ、電子マニフェストを活用する」「契約も電子契約で正しく締結する」といったあるべき運用を行う体制を整え、大いに活用するべき制度であると思います。
認定を受けるハードルもそれほど高くないのでトライしてみては如何でしょうか。

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