
人体や環境に悪影響を及ぼす可能性のある産業廃棄物は、適切に保管しなければなりません。そのために定められているのが、産業廃棄物の保管基準です。産業廃棄物を排出する事業場に携わる方は、保管基準や保管方法、表示義務などを把握しておく必要があります。
そこで本記事では、産業廃棄物の保管基準や保管方法、表示義務などを解説します。記事後半では、産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の保管場所における表示義務や、保管場所に設置する看板の記載内容・記入例などもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
産業廃棄物の保管基準
産業廃棄物の保管基準には、以下が定められています。
● 囲いの設置
● 掲示板の設置
● 飛散・流出・地下浸透・悪臭への対策
● 屋外保管時の対策
● 害虫への対策
● 汚染水への対策
それぞれの概要を詳しく見ていきましょう。
囲いの設置
産業廃棄物を保管する際、周囲への漏出や浸出を防ぐために囲いを設置する必要があります。法律では囲いの形状に関する明確な定義はないものの、生活環境への悪影響を避けるため、適切な対策を講じることが重要です。
産業廃棄物の形状によっては、囲いに負荷がかかるケースがあります。この場合は、荷重に耐えられる構造である必要があります。
掲示板の設置
産業廃棄物の保管場所には、規定サイズ(縦60cm×横60cm)以上の掲示板を設置し、以下の必要事項を明記してください。
● 産業廃棄物保管場所である旨
● 保管する産業廃棄物の種類(石綿含有産業廃棄物が含まれる場合は、その旨も記載)
● 保管する産業廃棄物の量(積替えや処分のために保管している場合)
● 保管場所の管理者の氏名または名称、連絡先
● 屋外で容器を用いずに保管する場合は、その最大保管高さ
上記のいずれか一つでも満たしていない場合、設置義務を果たしていないと見なされるため、漏れなく対応しましょう。
※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」(入手日付2024-08-05)
飛散・流出・地下浸透・悪臭への対策
産業廃棄物を処理する際は、飛散・流出・地下浸透・悪臭への対策をしっかりと施さなければなりません。
廃棄物が飛散・流出しないよう、保管場所を囲いで囲む、カバーをかけるなどの対策が求められます。容器を用いずに産業廃棄物を保管する場合は、高さや斜面に関する制限を守ることが重要です。
また地下浸透を防止するためには底面を不浸透性の材料で覆う、悪臭の発生に対してはそもそも臭気を発生させないようにする、脱臭装置を設置するなどの対策が求められます。
屋外保管時の対策
産業廃棄物は、できるだけ屋内で保管するのが望ましいとされています。しかし必ずしも屋内で保管できるわけでなく、事業場によっては屋外で容器に入れずに保管するケースもあります。その場合は、囲いに接しない場合・囲いに接する場合で対応が異なるので押さえておきましょう。
廃棄物が囲いに接しない場合、囲いの下端から勾配50%以下にした状態で積み上げる必要があります。囲いに接する場合は、囲いの内側2m以内では囲いの高さより50cm以下に、2m以上の範囲では勾配50%以下にしてください。
害虫への対策
産業廃棄物の保管場所に、ねずみ・蚊・ハエ・その他の害虫が発生しないような対策も求められます。保管場所だけでなく、周囲の生活環境にも悪影響を及ぼす可能性が考えられるためです。
これらの害虫は衛生環境が悪い場所に発生する傾向にあります。そのため、保管場所を定期的に清掃し、衛生状態を良好に保ちましょう。
汚染水への対策
産業廃棄物の種類や性状によっては、汚水が発生するケースも考えられます。発生した汚水が外部環境に流出しないようにするのも重要です。
保管場所の底面を不浸透性の材料で覆う他、廃棄物から出る汚水を集めて処理するための排水設備を設置するなどの対策が求められます。加えて、油分分離層などの水処理装置を利用したり、容器に入れて保管して防水シートをかけたりするなどの対策も有効です。
産業廃棄物の保管方法
産業廃棄物の保管方法を、フレコンバッグ・ドラム缶・コンテナの3つに分けてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
フレコンバッグ
フレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)とは、ポリプロピレンやポリエチレン製の丈夫な袋で農業・工業分野や産業廃棄物の運搬・保管に使用されます。フレコンバッグを使用する際は、以下のポイントを意識してください。
- 劣化していないか
- 防水対策は十分か
- 破損する恐れはないか
フレコンバッグの使用前に、袋本体やベルト、ロープの破損や劣化具合を確認しましょう。破損していたり劣化していたりすると、落下事故や内容物漏出が発生する恐れがあります。紫外線や風雨にさらされると劣化しやすいため、屋外保管の場合は特に注意しましょう。
また、内容物によっては防水対策が重要になります。水分を多く含む汚泥などの産業廃棄物を詰める際は、経時変化に注意しつつ、防水内袋付きのフレコンバッグを使用して漏出を防止してください。
木くずや金属くず、コンクリートくずなど鋭利なものを入れる場合、破れやすくなります。そのため、パレットの上に置くなどの対策を取ってください。複数積み重ねると破損するリスクが高まるので、原則2段積みにして、それ以上積む場合は荷崩れや偏荷重にならないようにしましょう。
ドラム缶
ドラム缶は汚泥や廃酸、廃アルカリなどの液体状または泥状の産業廃棄物の保存に適していますが、いくつかの注意点もあります。
屋外でドラム缶を長期間保管する場合は、腐食や破損、傷による漏れのリスクに注意してください。直射日光や水濡れ・乾燥による刺激が繰り返されるとコーティングが劣化し、膨張や剥離が生じる可能性があるので、定期的な点検を行い防水シートやカバーで保護しましょう。
枯れ葉や枝、草木類などの腐敗しやすい廃棄物をドラム缶で保管する場合は、耐熱性の高いドラム缶を選ぶと安全に保管できます。また、廃酸や廃アルカリなど腐食性の強い廃棄物を保管する際は、プラスチック製や耐腐食加工されたドラム缶がおすすめです。
さらにドラム缶には種類があるので、それぞれの特徴を理解して内容物を入れることも重要です。なお、取り外し可能なフタ付きのオープンドラム缶は、粉末や固形物の飛散を防ぐことに適しており、フタが固定されたクローズドラム缶は、液体を入れることに適しています。
コンテナ
貨物を入れて輸送に用いられるコンテナは、産業廃棄物の保管にも用いられます。特に木くずや金属くず、ガラスくず、紙くず、繊維くず、コンクリートくず、がれき類、ゴムくずなど固形状の産業廃棄物の保管に適しています。
産業廃棄物の保管に用いられるのは、主にバッカンとも呼ばれる着脱式のコンテナです。建築廃材や解体廃材を一時的に現場に設置された着脱式コンテナに集め、その後車両に装着して処理施設に直接運搬できます。ただし天井部分が露出しているので、防水シートやカバーなどで飛散や流出、悪臭、雨水の侵入を防止する必要があります。
産業廃棄物の表示義務
産業廃棄物の運搬・保管・処理を行う場合、それぞれにおいて表示義務が課されます。廃棄物処理法では、以下の5つのケースで看板による表示義務があると規定しています。
● 車両で産業廃棄物を運搬する場合(義務)
● 船舶で産業廃棄物を運搬する場合(義務)
● 産業廃棄物、または特別管理産業廃棄物の保管場所がある場合(義務)
● 最終処分場がある場合(義務)
● 医療機関等から排出される産業廃棄物の収集容器(推奨)
車両を用いて産業廃棄物を運搬する場合、排出事業者が自ら運搬する場合は、運搬車両に「産業廃棄物収集、または運搬に供する運搬車両である旨」「事業者の氏名や名称」を記載します。
収集運搬業者が委託を受けて運搬する場合は、「許可番号(下6けた)」も記載する必要があります。下図のとおり表示サイズも決められています。
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※引用:環境省「産業廃棄物収集運搬車への表示義務について」(入手日付2023-8-21)
船舶を用いて産業廃棄物を運搬する場合も同様に下図のような表示が必要です。廃棄物の区分は「産業廃棄物」になります。収集運搬業者が委託を受けて運搬する場合は、「許可番号(下6けた)」も記載する必要があります。

※引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則「様式第一号(第一条の三の二、第七条の二、第八条の五の二関係)」(入手日付2024-8-20)
産業廃棄物(または特別管理産業廃棄物)の保管場所がある場合は「産業廃棄物(または特別管理産業廃棄物)の保管場所である旨」「産業廃棄物(または特別管理産業廃棄物)の種類」「管理者の氏名または名称および連絡先」「最大保管高さ(屋外で容器を用いずに保管する場合)」を記載します。
後ほど詳しく記載します。
最終処分場がある場合は「産業廃棄物の最終処分場である旨」「産業廃棄物の種類」「埋め立て処分の期間」「管理者名」「連絡先」を記載します。
医療機関等から排出される産業廃棄物の収集容器は、感染性廃棄物の場合「バイオハザードマークもしくは感染性廃棄物の明記」が必要です。非感染性廃棄物の収集容器には「医療機関等名」「特別管理産業廃棄物管理責任者」「排出年月日」を記載します。
表示方法や表示内容は、都道府県や自治体で別に基準を設けている場合があるので注意してください。
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「産廃知識 産業廃棄物の運搬・保管等の表示」(入手日付2023-8-21)

産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の保管場所における表示義務
産業廃棄物や特別管理産業廃棄物は生活環境の保全に支障をきたさぬよう、保管基準が定められています。施設や設備・囲いの設置・汚水処理などさまざまな基準のなかに、表示に関する規定があります。
守るべきルールは「保管する産業廃棄物の看板が見やすい場所に設置されていること」です。看板の記載内容や記入例については下記で解説します。
産業廃棄物の保管場所に設置する看板の記載内容・記入例
事業活動に伴い排出される産業廃棄物は、微小な量でも人体や環境に悪影響を与える恐れがあるため、注意が必要です。必ず法律に則った方法で収集運搬・保管・処分を行ってください。
自身の事業で排出した産業廃棄物の処理責任は事業者自身に課されます。収集運搬や処分を専門業者に委託する場合でも、廃棄物処理法が定める保管基準を守る必要があります。
看板に記載する内容
先述した通り、看板に記載する内容は以下の通りです。
● 産業廃棄物保管場所である旨
● 保管する産業廃棄物の種類(石綿含有産業廃棄物が含まれる場合は、その旨も記載)
● 保管する産業廃棄物の量(積替えや処分のために保管している場合)
● 保管場所の管理者の氏名または名称、連絡先
● 屋外で容器を用いずに保管する場合は、その最大保管高さ
記載内容に関していくつか注意点があるのでご紹介します。
氏名を記載する際は、問題発生時の対応をスムーズに実施するためにも、管理責任の所在を明示し、連絡が取りやすいように担当部署名も記載しましょう。また連絡先は、内線番号だけでなくトラブルにも迅速に対応するためにも、外線番号も記載してください。
文字サイズに関して法的な規制はないものの、小さい文字で書くメリットはないので、大きめの字ではっきりと記載することをおすすめします。
看板の記入例
産業廃棄(または特別管理産業廃棄物)保管施設 | |
産業廃棄物(または特別管理産業廃棄物)の種類 | ○○○、△△△ |
管理者の氏名または名称、および連絡先 | ○○○区○○○町○○○ 株式会社△△△△ 代表取締役 振興太郎 電話番号 ××ー××××ー×××× |
最大保管高さ | 〇.〇m |
最大保管高さは屋外で容器を用いずに保管する場合に記載が必要です。
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「産廃知識 産業廃棄物の運搬・保管等の表示」(入手日付2023-8-21)
看板の大きさ
産業廃棄物の保管場所に設置する看板の大きさは縦横60cm以上です。上記の基準を満たさないと、看板および記載内容が無効だと判断される可能性があります。
文字の大きさに特段指定はありませんが、遠方からでも書かれた内容が分かるように視認性には配慮が必要です。
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「産廃知識 産業廃棄物の運搬・保管等の表示」(入手日付2023-8-21)
看板の設置場所
看板は産業廃棄物の保管場所に設置する必要があります。廃棄物処理法で表示義務が定められている目的は、周辺環境への汚染防止ならびにトラブル時に連絡体制を確保することです。
注意喚起として重要な意味を持つため、設置義務を果たすだけでなくルールに則った対応が求められます。
産業廃棄物の保管場所には看板以外にも法律でさまざまな基準が設けられています。まず保管には囲いが必要です。構造上の明確な定義は存在しませんが、廃棄物の荷重が囲いに直接かかる場合、その荷重に対して耐力上安全な構造が求められます。
容器に入れずに屋外で産業廃棄物を保管する場合、別途、遵守すべき基準が存在します。
廃棄物が囲いに接しない時は、囲いの下端を起算として勾配が50%以下としなければなりません。
廃棄物が囲いに接する時は、内側2mは囲いの高さより50cmの基準線以下、それより内側は勾配50%以下と定められています。
保管する産業廃棄物が、悪臭の発散・飛散・流出・地下浸透を起こさないよう配慮が必要です。廃棄物の保管に伴い汚水が生じる可能性がある時は、地下水や公共水域への流出を未然に防がなければいけません。
例えば排水溝の設置や、底面を不浸透性の材料で覆うことなどが挙げられます。
産業廃棄物処理法では保管場所における害獣・害虫の発生対策も求めています。日常的な清掃および定期的な処理業者への依頼などの措置を講じましょう。
なお、石綿含有産業廃棄物や、水銀使用製品産業廃棄物を保管する場合、取り扱いは要注意です。他の廃棄物と混同してしまわぬよう、梱包や仕切りの設置が必要です。
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「産廃知識 産業廃棄物の運搬・保管等の表示」(入手日付2023-8-21)
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「産廃知識 保管基準」(入手日付2023-8-21)
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